今年度は塾講師8年目にして初めて医学部受験の高3生を担当しています。彼の第1志望である国立大学医学部以外に何校か受験するなかに 防衛医科大学 があります。実は同大学の受験日は今月の22日なのです。そんなわけで今日の授業は宿題で解いてきた2020年度過去問の解答レビューでした。

 

防衛医科大学の入学試験(筆記)は 「択一式」 と 「記述式」 に分かれていて、「択一式」 は90分で英語、数学、国語3科目を解くのですが、択一式で一定の得点に達しない受験者については記述式の採点を行わないそうなので、言ってみれば一次試験的な位置づけなのかもしれません。英語の択一式問題については15問中13問が正解だったのでまずまずの出だしでした。

 

全て記号解答の 「択一式」 に対し 「記述式」 は英文和訳や和文英訳、記述式の空所補充問題などが混在しているため何ともいえませんが、ざっとみて正解率は6割を超えているようでした。そのなかで最も苦戦したのが 「パラグラフ整序」 の問題です。文字通りパラグラフを正しい順番に並び替える問題です。これとは別に、択一式も含め、単語を並び替えて文を完成させる「整序作文」 問題も複数出題されていたことから、「整序」 で受験生の英語力を判断しようとする作問者の意図を感じました。

 

大問1の第1問は、先頭パラグラフと最終パラグラフの間に、ランダムに並べられた (1) ~(7)の7つのパラグラフを正しい順番に並べ替える問題です。各パラグラフは 60~90語位の文章ですので、冒頭・最終を含めると全体として700語程度の文章を読む必要があります。これを含めて大問は全部で6つ、それを100分で解答しなくてはならないと思うと怖気づいたようで 「大問1は捨てました」 と無回答でした。

 

パラグラフ整序問題は大問4でも出て来て、150語前後の4つのパラグラフの並び替えです。こちらは、正解が ④→②→①→③ のところを ③→①→④→② と解答していました。そんなわけで今日の授業のトピックはパラグラフ整序問題の攻略法ということになりました。

 

「攻略法」 といっても英文読解の基本に立ち返ることに過ぎません。長文読解問題についていつも生徒に言うのは、第1パラグラフの第1文にはその文章全体のテーマが提示される、各パラグラフで扱うトピックは基本的に1つ、なので表現は違っていても実は同じことの言い換え(パラフレーズ)である、といったことです。

 

そこで、大問4については ④→② のつながりは見えていたようなので、パラグラフ①と③の第1文だけを読んでみると、① にはのっけから "This link … " と書かれています。したがって、"This” で受ける何かを説明するパラグラフがこの前に必要なことが分かります。そして ③ の第1文の中頃に "suggests yet another cause for …" というフレーズが出てきます。"another(別の)" とある以上、ひとつ目の理由が書かれているパラグラフが先行するはずです。この生徒はこれを見落としていました。

 

続けて大問1についても各パラグラフの第1文を追ってみると、明らかに分かるのは 「一般論」 か 「具体論」かということです。大問4でも ④ が冒頭パラグラフに来るのは "The world got hot in a hurry 56 million years ago." という壮大なテーマ出しが第1文に来ていることが判断材料でした。概して、「一般論」 は著者の主張で、それを読者に分かってもらうために「具体論」 を提示するという展開がよく使われます。そして最終パラグラフにも念押しや締めくくりの意味で、冒頭の主張が繰り返されることがよくあります。

 

おそらく作問者は文章内容そのものというより、こうしたパラグラフ同士のつながりといった "文章構成" を読み解く力を見ているのでしょう。言ってみれば 「パラグラフ・リーディング」 力です。したがって、パラグラフ整序問題といえども、少し引いて 「俯瞰的に」 眺めることで、文章全体の長さに "怖気づく" ことなく文章の流れや構成が見えるようになるでしょう。この生徒には、次回の2021年度の過去問で是非正解してもらいたいものです。