高校で習う英語の単元に仮定法(Subjunctive Mood)があります。ある事柄を事実として述べる直接法(Indicative Mood)に対し、心の中で想定して述べる場合に使われる動詞の在り方です。まず習うのは仮定法過去と仮定法過去完了ですが、習いたての頃、「(動詞の)形」 と 〔(動詞が表す)意味〕 のズレにとまどう生徒がよく見られます。

 

仮定法 「過去」: 〔現在〕 の事実に反する仮定 「もし(今)~ならば、…なのに」

仮定法 「過去完了」: 〔過去〕 の事実に反する仮定 「もし(あの時)~だったら、…だったのに」

 

基本的には、if 節のなかの述語動詞が 「過去形」 もしくは 「過去完了形」 であれば、仮定法の文だと分かるのですが、日頃から "時制" にあまり目が向いていない生徒はそこを見過ごす傾向があります。とはいえ、何度も演習問題を繰り返すうちに基本の 「型」 には慣れてくるものです。そして次に引っ掛かるのが、<if 節: 「仮定法過去完了」、主節:「仮定法過去」> という 「混合仮定法」 と呼ばれる時制の組み合わせです。

 

If she had taken the first train, she (          ) here now.

ア.  was      イ.  would be        ウ.  had been        エ.  would have been

 

この問題では、最初のころ エ. を選ぶ生徒が多くいます。おそらく、if 節が過去完了形なので仮定法と分かったところで "思考停止" してしまって、主節も同じ仮定法過去完了(のはず)と自分勝手に判断してしまうからなのでしょう。時制の形を決めるのは "時間" を示す副詞(句・節)です。この場合であれば、最後に置かれた "now" が目に入らなかったのか、見えていても時制との関係に気づかなかったのか。。。ともあれ、「始発列車に乗っていれば、彼女は今ここにいるんだけど」 という仮定法過去で帰結する イ. が選べるようになって、ようやく仮定法の第1段階が終了します。

 

こうしてみると、仮定法の理解には 時制心 が結構重要であることがよく分かります。逆の見方をすれば、仮定法を学ぶことは "時制心" を育むひとつの契機になるともいえそうです。