「行ったり来たり」 を英語で言うと "back and forth" となって 「後ろ」 が先で 「前」 が後と順番が逆になります。"to and fro(=from)" という表現もありますが、こちらは 「行く(go to)」 そして 「来る(come from)」 という日本語の語順と同じです。"fro" はスコットランド英語だそうですが、同じブリテン島のなかでも発想の違いが見られるのは面白いことです。それはさておき、今日の英語の授業で、さぞかし目が "行ったり来たり" しながら英文を読んだのだろうなと思える和訳がありました。下線部を和訳しなさいという問題文がこれです。

 

We can see how important some people think the essay is if we look at the way one popular reference book describes it.

 

たしかに組み立てが込み入った英文です。この生徒が引っ掛かったのは "some people think" と "if" と "the way" の三つでした。"We can see" の後に出てくる "how importanat" が間接感嘆文であることは正しく捉えていたのですが、その直後にある "some people think" に惑わされて 「一部の人々が随筆を考えることがどれほど重要でないか」 と訳していました。そのため、"how important ~ the essay" を "is" の主語と考えたため "if" を 「~かどうか」 の意味に捉え、さらに "the way" を無視して訳を作ってしまいました。全体を通して読むと、本人も認める意味不明の和訳になっていましたが、少なくともこの英文と "格闘" した思考の痕跡が辿れる訳ではありました。

 

"some people think" の部分は、以前、関係代名詞の例文の中にあった "You should do what you believe is right.(あなたが正しいと信じることをすべきだ)」 の "you believe" と同じ 「挿入節」 だから括弧で括ってみたら、という私のひとことで氷解しました。そうなれば、切るのは "is" の前ではなく後になるので、"if" は 「もし~ならば」 という意味の接続詞と捉えるのが自然です。そして "the way" を "how" に置き換えたら、というヒントでようやくこの文の正しい組み立てが "見えた" ようです。そこまでくれば、「ある有名な参考書が随筆についてどのように説明しているかを見れば、随筆はいかに取るに足らないものであると考える人たちがいることが分かる」 という文意を掴むまではそれほど時間がかかりませんでした。 

 

英文は左から右へと流れていきます。したがって、その流れに沿って理解するのが、いわゆる 「英語で考える」 ということなのでしょう。しかし、語順が異なる日本語にそれを移し変えようとすると必然的に目が 「行ったり来たり」 せざるを得ません。おそらく誤訳の大半はそのプロセスで起こります。したがって、まずは 「左から右へ」 という流れの中で正しく英語の 「文節」 を仕分けしておく必要があります。少なくともその単位で和訳を考えるのであれば、ぶつ切りのような日本語でも英語で考えていることにはなると思います。

 

冒頭の "We can see (私たちは分かる)" とくれば、「何が」 分かるの?という疑問が湧きます。英語はそれに応える形で新たな情報を出してきます。もちろん今回の "some people think" のような英文法で習った知識が実践で使えなければなりませんが、そのために多くの英文を読む練習を積み重ねているわけです。今日の授業の教訓は 「"左から右へ" という英文の流れに沿って読む」 でした。それが宿題のなかでどのくらい実践できるようになっているか、次回の授業が楽しみです。