紆余曲折はありましたが 6月12日に米朝首脳会談がシンガポールで開催される可能性がかなり高くなってきました。当初は朝鮮半島の非核化に向けては "リビア方式” で行くとしていたアメリカが、ここにきて "長期的な” 交渉を容認する方向に軟化したようです。しかしながら、一筋縄ではいかない指導者同士ですから、残る1週間余りでまたどんな急展開があるのか予断を許しません。 

 

ところで、この非核化問題では 「完全で、検証可能で、不可逆的な(核放棄)」 という表現をよく目にします。オリジナルはどのような表現なのか気になったので調べてみると "complete, verifiable and irreversible" のようです。2013年4月23日のNATO外相会議声明 にこんなくだりがありました。

 

We confirm our commitment to lasting peace and the goal of the verifiable denuclearisation of the Korean Peninsula in a peaceful manner. We urge the DPRK to refrain from further provocative acts. It must abide by its obligations under all relevant UN Security Council resolutions; return to the NPT and its IAEA safeguards agreement; comply with its commitments in the September 2005 Joint Statement of the Six-Party Talks; abandon all nuclear weapons and existing nuclear and ballistic missile programmes in a complete, verifiable and irreversible manner; and engage in credible and authentic talks on denuclearisation.

 

この声明では 2005年9月の6ケ国協議(米、韓、北朝鮮、中、露、日)における共同声明の合意事項に立ち返ることを表明していますが、これまでも何か大きな動きがあるたびに "abandon all nuclear weapons and existing nuclear and ballistic missile programmes in a complete, verifiable and irreversible manner" が確認されてきたということなのでしょう。

 

”verifiable” は動詞 ”verify” (調査や証拠によって検証・確認できる) から来る形容詞ですから、「検証可能で」 というのは具体的手続きを伴なう、かなりハードルの高い要求事項だと思います。”長期的” 交渉にもつれる可能性は大です。

 

その一方で、朝鮮半島の非核化(denuclearisation)はそもそもが6ケ国協議での合意事項なのですから、米朝2ケ国間でどこまで話が進められるのかは疑問です。この際、残りの韓・中・露・日の首脳も一緒にシンガポールに集まろうぜ!なんていうことをトランプ大統領なら突然言い出しかねないような気もしますが、TPP よりも FTA のような二国間協議が好きなトランプ大統領は、やっばり米朝会談で米国国内にアピールできる "big deal" を実現させたいと思っているのかもしれません。