数学再入門の本を読んでいたとき、この数式を目にした第一印象は 「えっ?」 という驚きでした。1/3 = 0.33333… であることには何の違和感も覚えませんが、この式の両辺を3倍した 1 = 0.99999… が変だと思ってしまうのは何故なのでしょうか。

 

1/3 = 0.33333… の場合は、左辺の 「分数」、右辺の 「小数」 が等号 "=" で結ばれています。右辺は、小数点以下 ”3” がどこまでも続く 「無限小数」 と呼ばれるものです。したがって、それを3倍すれば "9" が無限に続くことになりますが、そのときの左辺が 「整数」 であることが、1 = 0.99999… を 「?」 と思ってしまう原因なのかもしれません。

 

 

によれば、等号 = が初めて使われたのは16世紀半ば頃だったそうです。

 

  イギリスのロバート・レコード(Robert Recorde: 1510年頃~1588)が 1557年の代数の本 『知恵の砥石』(Whetwtone of Witte) で現在の等号 = を初めて使ったといわれています。彼の本に "2本の平行線以上に等しいものはないから” という理由から考えたと書かれています。そのせいかレコードの本にある = はずいぶん横に長く書かれています。(同書 p.24)

 

ちなみに = が使われる前の等号関係は "aequatur" とか "aeq." などの言葉で表現されていたといいます。おそらく、そのフランス語に由来する英語の "equation"(等号) を Oxford Dictionary は次のように定義しています。

 

 A statement that the values of two mathematical expressions are equal (indicated by the sign =).

 

等号は 「2つの数学的表現が等価であるという "statement(表明、主張)"」 と言われると、先ほどの 「割り切れなさ」 が少し軽減されるような気がします。1 = 0.99999…には、無限小数 0.99999… を整数1と等価とみなす、という数学上の意思表示が感じられるからです。