英語の "人称代名詞" は、単数・複数の区別、3人称の性別、格変化など、日本語には見られない幾つかの特徴があるので、中学2年生でもなかなか慣れないところがあるようです。

 

 

先日、塾の授業で人称代名詞の変化の説明をしているとき、以前新聞記事で読んだ 「単数扱いの they」 (Singular "they”) の説明をここで始めたら、生徒はさらに混乱するだろうと思いました。

 

たしかAP通信が配信記事の英文表記ルールを変更したという内容だったという記憶を頼りに WEB を検索したところ "AP style change: Singular they is acceptable 'in limited cases' がヒットしました。改めて記事を読み直してみると、2017年の "AP Stylebook" に記載された ”単数形のthey” について説明しているところがありました。

 

 

LGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, and Transgender) に象徴される "性的少数者" に対する配慮が、"singular they" の背景にあることが伺えます。

 

この記事では、本人が、自分は男性でも女性でもないと認識していたり、he/she/him/her/ と呼ばれたくない場合に、性を特定しない(genter-neutral) 人称代名詞として "singular they" を使うとあります。ただ、使用に際してはその旨を付記する配慮が求められるようなので、実務的には使いづらいような気がします。したがって、まずは、本人の名前など、代名詞を使わない適当な表現方法を考えることが優先されるのでしょう。

 

こうした英語の苦労に比べれば、「こちら、あちら、この方、あの方」 のように、性を特定せずに "さりげなく" 個人を表現する多彩な方法を日本語は持っているようです。