3人部屋の窓側にいたのがジニーだった。
私が初めて部屋に入り彼女に挨拶をした時
日本人かな?と思ったけれど、
違うようだった。
彼女は朝起きると髪をとかし、
軽くお化粧をしてから
朝食を食べ、散歩をしたり読書したり
誰かと電話で話をしたりして過ごしていた。
姿勢が良くて気品があった。
同部屋のもう一人の方から彼女も迷惑を
うけているはずだが悪口を言ったり、
目配せをしたりといったことは全くなく、
まるで眼中にないようだった。
彼女の寝姿はいつもまっすぐで、
ベッドの下にはスリッパがきちんとそろえて
置いてあり、「エレガント」そのものであった。
2日目になり、私の感情も落ち着いてくると
彼女と少しづつ話をするようになった。
香港出身の北欧育ちであること、
お父さんが肺がんで亡くなり、
彼女も遺伝性の肺がんであること。
別の病院にいたが、治療方針がたたず、
私と同じ主治医を頼って転院してきたこと。
などを話してくれた。
中国系のお友達が食事を届けてくれていたが
お見舞いもあまりないようで、
少し寂しそうだった。
私が一足先に退院するけれど、
ジニーが退院したら一緒に外で
お茶しようねと話していた。
退院した後も私が病院で検査がある時は
彼女を訪ねた。
6回目の抗ガン治療の時は
彼女がガン病棟から会いに来てくれた。
抗ガン治療のことを考えるだけで、
病院に行きたくなくなるのだけれど、
ジニーに会えると思うと、
病院へ行くことができた。
彼女もようやく抗ガン治療の方針がたち、
第1回目の抗ガン治療を受けた。
それから数日して、肺に水がたまったため
集中治療室へ入らなくてはいけない、
死ぬのが怖いと連絡を受けた。
私がお見舞いに行った時、彼女の部屋に
彼女のベッドがなかった。
看護師さんにジニーはどこですか
と聞いたら、
ちょっと待っててねと言われた。
しばらくしてドクターから
残念だけれどジニーは亡くなりましたと
告げられた。
なぜ?とは怖くて聞けなかった。


