私はさほど実感がわかずに涙も出なかった。
私よりも夫の方が受けたショックが大きいようであった。
義母も義祖母も乳がんにかかっており、
今度は私で申し訳ない気持になった。
幸い夫の学生時代の友人がウィーンの大学病院で
外科として勤務しており、乳腺外科医を紹介してくれた。
その乳腺外科医が大学病院の乳がんセンターのホープ、
Dr. Bを紹介してくれた。
Dr. Bに連絡をすると、翌日が病院での夜勤なので
その勤務前に一度会いましょうと言ってくれた。
夕方7時ごろ病院のガン病棟に行くと、病室から
白いシーツで覆われたベッドが運び出されるところだった。
入院していた方が亡くなったところにいきなり遭遇してしまう
というハプニング。
Dr. Bは私より一つ若く、小柄な優しい感じの先生だった。
検査結果を見て
「あなたのガンのタイプは非常にアグレッシブです。
でもこのタイプのガンには非常に良い抗ガン治療と
分子標的治療薬があります。
99%の確率で治ります。治療はとてもつらいものですが
一緒に頑張りましょう」と言われた。
ガン病棟を後にする時、初めて自分がガンになった実感が
わき起りそこで初めて泣いた。
