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野球のお話しです。

イチローは本当にアメリカでも好かれている。オールスター戦も7年連続の出場になり、何と球宴のMVPにも選ばれた。もちろんMVPに選ばれたのは好かれているからではなく、彼のランニング本塁打を含む3打数3安打の好記録で文句なしの選出と思う。

彼がこれ程までに人気があるのは、やはり彼がユニークな選手ということだと思う。でかくて体格がいい選手が、がんがんヒットや本塁打を打つのが当たり前だったメジャーリーグに、機敏さと足を生かした彼の打撃のスタイルは本当に新鮮だった。今では日本からもオールスター戦の選出投票が出来るようだが、とても日本からの票だけでは7年連続出場は難しい。これはアメリカ国内でも絶大な人気があるからだ。

それと対照的なのがバリー・ボンズ(Barry Bonds)だ。彼はハンク・アーロンの持つ755本のメジャー通算本塁打記録にあと4本と迫っているので(7月15日現在、751本)、今、最も注目されている選手だが、実は彼はあまり好かれていない。

その一つの理由は違法薬物使用の疑いがかけられているからで、特に73本もの本塁打を打った2001年に使用していた疑いが強い。本人は違法薬物と知って使ったことはない(つまり結果的には使ったかもしれないが、意図的に違法薬物は使っていない)と既に大陪審の前で証言しているので、そういう意味では多分真実は一生分からないままになってしまうだろう。

でも、この違法薬物の疑惑の前から、実はボンズはあまり好かれていなかった。アメリカではプロの選手は単に試合で高給に見合ったプレーのみでなく、試合外でも一般人(特に子供にとって)お手本になるような態度を要求される。ボランティア活動をするのも非常に重要と考えられているし、特に試合に負けた時やスランプの時に、どんな積極的で前向きなコメントをするかも、結構注目される。要はリーダーとなるべく素質があるかを非常に重要視する。彼はいつもマイペースで一匹狼的な態度をとる事が多く、それが結構反感を買っていたのだ。

話を違法薬物疑惑に戻すと、疑わしきは罰せずで100%確証が得られない事に対して、非難するのは良くないと言う人も少なくはない。そして先週のTIME誌にまで、ボンズと違法薬物に関連する記事が載っていた。大記録達成が間近に迫ると、いろいろ論争が起こるのは当たり前で、論争するなら、もう少し事実関連をよく熟知してから論争しなさいと言った趣旨の記事で要約は以下の通り。
たとえ違法薬物を使っていたにせよ、選球眼とか長打を打てるフォームなどは薬物で上達できるものではないので、もともと彼には素質が備わっていた事も事実である。違法薬物使用の疑いを持たれる前から(使ってなかったと思われる時期から)、彼はすでに文句なしの大打者だった事は事実である。
過去のホームラン王のベーブ・ルース(Babe Ruth)やハンク・アーロン(Hank Aaron)はもちろん違法薬物は使ってなかったものの、その時代における打者に有利な恩恵を享受していた。ベーブ・ルースの本拠地のヤンキーズ球場のライトフェンスまでの距離はたったの295フィートしかなく、左打者の彼がホームランを打ちやすい球場になっていた(現在は314フィートになっている。19フィートの違いは約5.8m)。ハンク・アーロンは1968年にはたったの29本塁打しか打てなかったが、次の年からピッチャーマウンドの高さが15インチから10インチに下げられ、それから彼の本塁打の本数は飛躍的に増えた。
本格的に違法薬物テストを行うようになった2006年から、実際に疑いが持たれた選手48人のうち、33人はピッチャーだった。つまり昔から打者より投手の方が違法薬物を使う傾向にあった可能性が高いとなると、打者はアンフェアな投手の多い中で(不利な状況で)プレーをしていたことになる。などなど。

でも論争が起きるのは、その選手が好かれているかいないかは、あまり関係ない。こんなに好かれているイチローでも、2004年に262本の安打でジョージ・シスラー(George Sisler)の持つメジャーリーグの記録(257本)を更新した時も、実は論争はあったのだ。シスラーが257本の記録を樹立したのは1920年で、当時の試合数は154試合だった。ところが今のメジャーリーグの総試合数は162試合で、イチローがシスラーの記録に並んだのは159試合目だった。つまり5試合余分にプレーして、ようやくシスラーの記録に並んだ事になり、記録を塗り替えるのに値しないと言う人もいた。

といった訳で、記録更新がかかると、いろいろ熱い論争がいつも起こるのが常なのだ。まあ、いずれにしてもバリー・ボンズが好きでも嫌いでも彼の記録更新のホームランボールをキャッチしたいと思っているファンは非常に多いのは間違いない。何故かって?それは勿論オークションでそのボールを売れば大金を得られるからだ。2001年に73本目の記録更新したホームランボールがスタンドに入った時、まるで暴動が起こったようにボールに群がるファンがすごかった。このボールの所有権をめぐって裁判まで起こり、その様子を記録したドキュメンタリ映画(Up for Grabs - 2004)まで出来た。

今回、記録を更新した時に、どれ程の騒ぎになるか、本当に見当も付きません…。
(写真左はイチロー、右はバリー・ボンズ)