
おすすめ度: ☆☆☆☆ (Very good)
ご無沙汰してました。皆さんももうこのニュースはご存知と思いますが、先週の月曜日(7月30日)にイングマール・ベルイマン監督が亡くなりました。実は偶然にもそのたった二日前に(7月28日)に私はこの映画をDVDで観て、次のレビューにしようと思っていたのです。この映画は「第七の封印(The Seventh Seal - 1957)」と「野いちご(Wild Strawberries - 1957)」で世界の映画人から注目された2年前に制作されたイングマール・ベルイマンの作品では珍しいラブロマンスコメディです。
ベルイマンに感化された映画人というと多分最初に思い浮かぶのはウディ・アレンではないかと思います。監督としてデビューして以来コメディを撮り続け、「アニー・ホール(Annie Hall)」でアカデミー作品賞と監督賞を受賞して、次の作品が期待される中で公開されたのが「インテリア(Interiors)」でした。この映画はベルイマンを彷彿させる作風で、当時はコメディ一点張りのウディ・アレンがこんなに上出来のシリアスドラマも撮れるのだと驚いたものです。
しかも興味深いのはウディ・アレンは「インテリア」に登場する母親役は最初はイングリッド・バーグマンを考えていたのですが、彼女は既にイングマール・ベルイマン監督の「秋のソナタ(Autumn Sonata)」に主演する事が決まっていたので丁重に断り、ウディ・アレンは代わりにジェラルディン・ペイジを起用したそうです。そしてイングリッド・バーグマンは「秋のソナタ」で、ジェラルディン・ペイジは「インテリア」で共に1979年のアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたのです。
こういった二人の映画監督の偶然とは思えないようなつながりを知るのも興味深いですし、ベルイマン監督もこの「夏の夜は三たび微笑む」のようなラブコメディを撮っていた事を考えると、ウディ・アレンが上質なシリアスドラマを撮れるのは逆に当たり前の感じさえしてきます。
この映画のお話は二十世紀の初頭のスウェーデンの小さな町。弁護士のフレデリック・エーゲルマン(グンナール・ビヨルンストランド)は、まだ十六歳のアン(ウラ・ヤコブソン)と再婚したが、彼の年頃の息子のヘンリック(ビヨルン・ビェルヴヴェンスタム)は、彼女や女中のペトラ(ハリエット・アンデルソン)のことが気になって仕方がない。その一方で幸せそうなフレデリック・エーゲルマンだが、彼は実は舞台女優デジレ(エヴァ・ダールベック)との情事という秘密があったのです…。
この映画は最初の10分ほどで、殆どの登場人物のおかれている状況、性格がちょっとした仕草や会話で明確になり、この辺はベルイマンの人間の描き方に凄く感心してしまいます。決してお腹をかかえて大笑いするようなコメディではありませんが、登場人物の会話の妙や、行動、仕草に微笑ましくなるようなシーンが沢山出てくる洗練された感じのコメディです。いろいろな階級の人間が自分に本当に合った伴侶を見つけようとするドタバタ劇は、セックス(外見)と内に秘めたる真の愛の狭間で葛藤する人間の永遠のテーマな訳で、それを考えると他の彼のシリアスドラマに匹敵するような、ヒューマニティを追求したベルイマンの傑作ではないかと思います。
ベルイマン監督の映画が好きで彼の違った側面を見たい人にも、彼のシリアスな作風が少し苦手という人にもきっと気に入る作品ではないかと思います。