
おすすめ度: ☆☆☆☆☆ (Excellent)
アルフレッド・ヒッチコック監督、レイ・ミランド、グレイス・ケリー主演の「ダイヤルMを廻せ! (Dial M for Murder - 1954)」です。オリジナルはフレデリック・ノットの戯曲およびテレビ劇で、作者自身が脚色を担当。ロンドンの住宅地にあるアパートに住むトニー(レイ・ミランド)とマーゴ(グレイス・ケリー)・ウエンディス夫妻。マーゴはアメリカのテレビ作家マーク・ホリデイ(ロバート・カミングス)と不倫な恋におちており、それを恨むトニーは、ひそかに妻の謀殺を企てていた。綿密な計画を立てたトニーだったが、事件は思わぬ展開に…。
これはもともと3D(立体画像)で撮影された映画でしたが、公開時にはすでに3Dの人気は下降気味だったので、劇場のオーナーは3D版か通常版での上映かを選択できたようです。アメリカ公開時から約5ヶ月遅れて日本で公開され、その時3Dでも公開されたのかは私は分かりませんが、私はラッキーにもアメリカに来てから、この作品を3Dで観る機会がありました。
最初のワーナーのロゴからして立体感があり、この映画を3Dで観た時は、観客はこのロゴだけ見て、かなり歓声が沸きました。私もこのロゴだけ見て結構興奮しましたが、でも本当に3Dの威力が発揮される場面はそんなに多くはなく、確かに貴重な体験でしたが、2時間近くも3D用のめがねをはめて見るのは多少苦痛だった感じもします。注意してこの作品を観ると、必ずと言っていい程、人物と観客の間に何かモノが映っていますが、これは3Dを効果をより良く出すためにヒッチコック監督が意図的に行ったことです。(写真を添付しました。)
ちなみに、かって80年代にレーザーディスクに対抗して日本ビクターが開発したVHDというビデオディスクで、この作品の3D版が販売されたと思いますが、これが最初で最後の世界で唯一の超貴重品なのですよ!
最初の数シーンからヒッチコックらしい驚きで始まります。映画の冒頭でレイ・ミランドとグレイス・ケリーがキスをしているシーンから始まり、二人は平穏な生活を送っているように見えますが、その後たったの数シーン後には何とグレイス・ケリーは他の男性(ロバート・カミングス)とキスをするシーン。グレイス・ケリーのような清楚な感じの女優がいきなり二人の男性とキスするシーンを見せられ、本当に驚かされます。しかもレイ・ミランドとキスするシーンは純真さを象徴するかのような白の服なのに、一転してロバート・カミングスとキスするシーンは真っ赤なドレス!その後も彼女のアパートでロバート・カミングスと向かい合って語るシーンはドアに写る影のみ。誰かが外からドアに近づいてきたと分かると、寄り添っていた二人の影はすーっと両側に分かれます。そしてドアを開けて部屋に入ってくるのはレイ・ミランド。
この推理映画はTVの「刑事コロンボ」でお馴染みの倒叙形式で、犯人が最初から分かっていて、レイ・ミランドが犯行を計画するところから、実際に実行に移し、彼が捕まるところまでが描かれますが、面白いのは映画を見ていると、彼の綿密な計画が些細なことで失敗しそうになる度にハラハラドキドキ。本来ならばグレイス・ケリーが殺害されない方がいい筈なのに、何故か映画を見ているとレイ・ミランドの完全犯罪が成立する方に興味が移行してしまいます。この辺もヒッチコックの計算し尽くされた演出で、ただただ脱帽。
この映画は基本的にユーモア度は少ないですが、その中でなかなかいい味がでているのがハバード警視役のジョン・ウィリアムス。そうあの映画作曲家のJohn Williamsと同姓同名ですが、彼は3作品のヒッチコック作品に出演。(あと2作品は「パラダイン夫人の恋 (The Paradine Case)」と「泥棒成金(To Catch a Thief)」。「パラダイン夫人の恋」はクレジットなし。)実は彼はヒッチコックのお気に入りの俳優で、TVのヒッチコック劇場にも数多く出演しているのです。
最後のレイ・ミランドが犯人と断定されるトリックもなかなかのもの。この作品も最初から最後までヒッチコックの演出を楽しめる超おすすめ映画です。