
おすすめ度: ☆☆☆☆☆ (Excellent)
最近アメリカのTV局は「ゴッドファーザー」をよく放映している気がする。もともと人気がある作品なので、これは単に私の思い過ごしかもしれないが、やはりAFIのトップ100で第2位になったのが少し関係している気もする。局によっては3作を一気に放映している時もある。私は3作共劇場で観て「PART1(1972)」と「PART2(1974)」は甲乙つけがたい傑作で、「PART3(1990)」も悪くはないが「1」と「2」には劣るという一般的な評価と同じだった。好みで言うと「2」が一番で、「1」、「3」という評価だった。「3」があまり評価されていない理由は沢山ある。「タッカー(Tucker: The Man and His Dream)」の失敗でフランシス・フォード・コッポラ監督の製作会社が財政難に陥り、その解消のために「3」を撮った事や、ウィノナ・ライダーが演じるはずだったマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の娘メリーがコッポラ監督の娘のソフィア・コッポラが演じたことでミスキャストの感じが強くなった事などが挙げられると思う。でも私はトム・ヘーゲン役のロバート・デュヴァルが出演料の関係で出演をキャンセルした事が、この作品が少し劣るように見えた大きな原因と思っていた。(彼が出演しない事で、脚本もかなり大幅に書き換えられたようだ。)
ちなみに興味深いのはソフィア・コッポラは実は「1」と「2」にもクレジットに名前は出てこないが出演しているのだ。「1」ではマイケルの甥役!(赤ん坊だったので男女は殆ど関係なかった)、「2」ではニューヨークに到達した汽船に乗っていた子供役だそうである。(彼女は1971年生まれなので「1」では多分まだ1歳の誕生日も迎えていなかったと思われる。)
AFIの新しいトップ100が発表された時も、個人的には「市民ケーン(Citizen Kane)」と「カサブランカ(Casablanca)」は半永久的に1位、2位に位置すると思っていたので、「ゴッドファーザー」が「カサブランカ」を抜かして2位になったのには少し驚いた。でも断片的ながら3部作をTVで見ていたら、自分の「2」、「1」、「3」の評価が少し変ってきた。それは二つあって、やっぱり「1」は文句のつけようのない傑作、そしてもう一つは「3」も「1」や「2」に優るとも劣らぬ傑作だという事だった。
「3」を制作すべきだったかどうかは議論があると思うが、もう出来てしまったので、「3」も含めてこの「3部作」を考えると、コルネオーネファミリーの映画と言うより、マイケル・コルレオーネの一生を壮大に描いた叙事詩的な映画というとらえ方も出来なくはないと思うようになった。そう考えると「3」は非常に重要なパートになり、この3部作に深みを与えている気さえするのだ。
「ゴッドファーザー」シリーズが評価が高いのはいろいろな理由がある。マフィアといえどもファミリーとしての人間ドラマがよく描かれていること、マフィアの実態がかなり忠実に描かれている事などなど。
でも、この3部作に共通したテーマというのは実はhonesty(誠実さ、正直さ)だったという気がしてきた。それが一番よく現れていたのは、「1」でマイケルがシシリーに逃れて現地の娘に一目惚れしてしまったシーン。彼は偶然にも彼女の父親に、彼女が誰か聞こうとして彼の怒りをかってしまう。でも父親に真意を持って説明して、彼女と付き合うことを許してもらい、最終的には結婚する。嘘をつかずに自分の気持ちを正直に相手に伝える事が信頼につながったのだ。実はドン・ビトー(ロバート・デ・ニーロ&マーロン・ブランド)の時代からコルネオーネファミリーは自分の方から先に誠意を見せ、それにより相手からも誠意を得るかたちで繁栄していたのだ。ドン・ビトーがファミリーのビジネスをマイケルに継がせようと思ったのも、マイケルがいつも正直で誠意を持って相手に接している事を知っていたからだと思う。それがファミリーとビジネスの繁栄、存続につながっていたのだ。
一時はファミリーのビジネスには加わらず正業につくことを望んでいたマイケルだが、状況が変わりドン・ビトーの後継者になる事を決断する。ドン・ビトーの時代とは変り、より非情な対応を迫られるマイケル。彼はある機会に嘘をつき、それ以降、コルネオーネファミリーは転落の一途をたどる事になった。
どこで嘘をついたか?そう、それは一作目の最後。マイケルは妹のコニー(タリア・シャイア)に暴力を振るう亭主を殺害するよう指示する。それがファミリーにとって問題を解決する最善の方法だった。そのあと妻のケイ(ダイアン・キートン)が「本当にあなたが指示して殺したのか?」と聞いた時に、彼は「やっていない」と彼女に初めての嘘をついたのだ。その時は家族を崩壊させない為には嘘をつくのが一番と思っていたのだろう。でもそれはコルネオーネ家が繁栄してきた法則に反したことだったのだ。ファミリーを思う気持ちはドン・ビトーに優るとも劣らなかったのに、皮肉にもそれがファミリー崩壊の始まりとなってしまったのだ。
悲劇は続き「2」で愛妻のケイと別居、彼女はマイケルの後継者を断つため妊娠を中絶、「3」のラストでは悲劇はさらに高まってしまう。そして誰にも見守られることなく孤独に一人でこの世を去るマイケル。この「3」のラストは3部作を締めくくるのになくてはならないと思うし、私にとっては、もう一作一作を切り離して語れない一大エピックです。