イメージ 1

おすすめ度: ☆☆☆☆☆ (Excellent)
エドモンド・グールディング監督の「グランド・ホテル (Grand Hotel - 1932)」。オールスターキャストによる映画の起源で、これ以降に公開されたオールスターキャストの映画は<グランドホテル>型映画と言われるようになった。

30年代~40年代にMGMは多くのスターを擁し、特に30年代の前半はMGMの専属俳優だったグレタ・ガルボ、ジョーン・クロフォード、そしてノーマ・シアラー主演の映画はMGM映画のみならずハリウッド映画全体で興行成績は常に上位に位置していて、彼女らは俗に言うドル箱スターだった。そのグレタ・ガルボとジョーン・クロフォードの共演に加えてウォーレス・ビアリー、ジョン・バリモア、ライオネル・バリモア、ルイス・ストーン、ジーン・ハーショルトといった大スターが主演したこの「グランド・ホテル」は当時としては本当にそれだけで話題の中心だったに違いない。

でもこういった往年の名優のことを知らなくても、この映画は十分に楽しめる。一時は名声を得たが最近は人気が下降気味で意気消失している踊り子グルシンスカヤ(グレタ・ガルボ)、事業が危機に陥り他社との合弁で窮地を脱しようとする実業家のプレイジンク(ウォーレス・ビアリー)、彼に雇われた魅力的な速記者のフレムヘン(ジョーン・クロフォード)、賭博に身を落とし借金返済のため盗みを企てるフォン・ガイゲルン男爵(ジョン・バリモア)、健康を害して自暴自棄に陥っている、もとプレイジングの会社の帳簿係だったクリンゲライン(ライオネル・バリモア)の5人を中心ベルリンのグランド・ホテルにて物語りが進行する。

偶然にも同じ日に泊まったグレタ・ガルボ、ウォーレス・ビアリー、ジョン・バリモア、ライオネル・バリモアの4人は皆、人生の窮地に陥っている。それが皮肉なことに予期せぬ展開を迎える。自分の宝石を盗みに来たとも知らずにジョン・バリモアと恋に陥ってしまうグレタ・ガルボ。育ちがいいのが災いし、非情になりきれないジョン・バリモア。強硬な手段で何とか合弁に成功し、窮地を脱したかに見えたウォーレス・ビアリー。ちょっとした偶然から人生の歓喜を知るライオネル・バリモア。自分の魅力を利用して、何か幸運をつかもうとするジョーン・クロフォード。複数の物語の進行が巧みで、それぞれの人物像がよく描かれていて、各人の思惑が交錯した華麗な人間ドラマが展開する。本当にこの5人の俳優の魅力が全開している感じだ。

でも、このスター共演の中でやはり注目するのは主演の女優二人。グレタ・ガルボとジョーン・クロフォードは同い年で(共に1905年生まれ)、この映画の製作中は、かなりライバル意識があったようだ。しかも面白いことに映画の中で二人が同時に登場するシーンはない。グレタ・ガルボは少し落ち目の踊り子の役、ジョーン・クロフォードは性的に魅力的な速記タイピストの役なので、見た目にはジョーン・クロフォードの方が少し魅力的に感じるが、グレタ・ガルボもすごくよくて、甲乙つけ難い。

こういった大スターが多数共演する映画は「グランド・ホテル」以降は例を挙げたらきりがないが、大女優二人(絶頂期の女優二人)が共演した映画は非常に少ない気がする。「愛と喝采の日々 (The Turning Point)」のアン・バンクロフトとシャーリー・マクレーンや「テルマ&ルイーズ (Thelma & Louise)」のスーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスが思い浮かんだが、確かに彼女たちはベテラン女優としての貫禄はあるが、これらの映画が公開当時に絶頂期にあったかというと少し違う。そういった意味でもこの「グランド・ホテル」はそんな華麗な大スターの共演が満喫できる見逃せない傑作です。