
おすすめ度: ☆☆☆ (Good)
ジョージ・シートン監督、ビング・クロスビー、グレイス・ケリー主演の「喝采 (The Country Girl - 1954)」。ブロードウェイで上演されたクリフォード・オデッツ『ユーモレスク』の戯曲から監督者シートン自身が脚色。ブロードウェイの演出家バーニー・ドッド(ウィリアム・ホールデン)は、今度上演する新作の主演者にフランク・エンジン(ビング・クロスビー)を使いたいと思っていたが、フランクは酒浸りで演技にも唄にも昔の面影がないという理由で周りは彼の起用に反対だった。バーニー・ドッドはフランク・エンジンが本領を発揮できないのは彼の妻のジョージー(グレイス・ケリー)に責任があると思い始めるのだが…。
この映画でグレイス・ケリーはアカデミー主演女優賞を受賞しました。彼女は1956年にモナコ大公レーニエ3世と結婚し王妃になり、事実上女優は引退したかたちになったので、彼女の女優暦はすごく短命でした(1951年から1956年)。1949年にブロードウェイでデビューして、その後はTVドラマにいろいろ出演していて、いまひとつ「ぱっ」としない女優でしたが、何と言っても彼女の魅力を開花させたのはアルフレッド・ヒッチコックでしょう。私は彼女が主演したヒッチコック三作品はどれも彼女の魅力が満喫できて、非常にお気に入りの作品ですが、強く印象に残っているシーンは、「裏窓 (Rear Window)」でアパートのバルコニーをまたぐシーン。何ともエレガントで品があり私にとって忘れられないシーンでした。
それに加えて興味深いエピソードは、グレイス・ケリーは「波止場 (On the Waterfront)」のエヴァ・マリー・セイントの役を断って「裏窓」に主演したのです。エヴァ・マリー・セイントは「波止場」でアカデミー賞を取ったので、もしグレイス・ケリーが「波止場」に主演していたら、同じようにアカデミー賞を受賞できたかもしれませんし、彼女のキャリアはまた違った方向に進んだかもしれません。でもヒッチコックによって彼女の魅力が最大限引き出されたと私は思いますし、この作品でアカデミー賞も取れたので(この作品で主演女優賞、エヴァ・マリー・セイントは助演女優賞だった)、結果的には彼女はいい選択をしたと思います。
この作品はヒッチコックの三作品のように彼女の優美さは余りありませんが、酒に溺れた夫に献身的に尽す妻の役を熱演。彼女の演技力を含めた魅力を堪能するには非常にお勧めできる一本と思います。特に前半はウィリアム・ホールデンから誤解されて、強く非難されるシーンが出てきますが、それでもくじけずに夫のサポートを続ける姿が印象的です。
ビング・クロスビーは最後にはウィリアム・ホールデンが絶対に代役は使わないと明言するのを聞いて、自分が奮起しなければと悟り、お酒を断って歌と演技に集中するのですが、少しだけ難を言うと、彼に本当にその意志があったのか少しよく描かれていない気がしました。お酒を断つには、周りのサポートのみならず、自分自身の多大な労力が必要な訳で、その辺が描ききれていない感じが少しだけしました。まあそれでも、彼が酒に溺れたのは、過去の痛ましい事故に起因していたのですが、それに悩みなかなか立ち直れない姿はなかなかの演技。
この二人に加えて非常にいい感じなのがウィリアム・ホールデン。最初はビング・クロスビーを使ったことに周りから非難されたプレッシャーと誤解からグレイス・ケリーに強く当たりますが、後半は自分の上演作品を成功させたい気持ちとビング・クロスビーを立ち直らせたい気持ちが重なり、彼を強く信じる姿がすごく感動的です。彼のキャラクタは最初は少し傲慢な演出家に描かれていますが、ラストの彼は仕事に徹した男らしさと、仕事に徹しているが為に(仕事の成功を追い続けているが為に)、私生活で自分が求めたものが得られない悲哀さも少しだけ見えて、非常に印象的でした。
「酒を飲む人の数と同じくらい、酒を飲む理由はある。
でもアル中が酒をやめる理由は二つしかない。
(飲みすぎで)死ぬか、自分で決意してやめるかだ。
There are as many reasons for drinking as there are drinkers.
But there are only two reasons why a drinker stops.
He dies, or he decides to quit all by himself.」
でもアル中が酒をやめる理由は二つしかない。
(飲みすぎで)死ぬか、自分で決意してやめるかだ。
There are as many reasons for drinking as there are drinkers.
But there are only two reasons why a drinker stops.
He dies, or he decides to quit all by himself.」
彼がビング・クロスビーに言ったこの言葉も印象的でした。