イメージ 1

おすすめ度: ☆☆☆☆☆ (Excellent)
ハワード・ホークス監督、ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール主演の「脱出」です。この映画、評判がいいのは前々から知っていて、観たいと思いつつ観るチャンスがなかった作品で、今回初めてDVDで観ました。観るきっかけとなったのは、以前に同じハワード・ホークス監督の「コンドル(Only Angels Have Wings)」を紹介した時に、「I'm hard to get, all you have to do is ask me」というセリフを引用しましたが、同じセリフがこの映画でも効果的に使われていると書いてあったので、ますます興味が増したのです。

映画を観ていると、そんなに頻繁には経験しませんが、颯爽としたタフな主人公とため息が洩れそうな美女が出てきて、それに加えて洗練された粋なセリフがいっぱい出てくる映画に遭遇して、「映画に酔ってしまう」ことがありますよね。この一番いい例は「カサブランカ(Casablanca)」と思いますが、この作品も私にとっては「酔ってしまった」一本になりました。

どこがそんなに良かったか?やっぱりハンフリー・ボガートとローレン・バコールとの会話。勿論これらの会話は映画の中だから素晴らしく、現実の世界ではとても交わせませんが、それでも一度は自分もこんな会話を交わしてみたいと思うような、シーンがいっぱい。

(ローレン・バコールがハンフリー・ボガートにキスをする)
ボガート「何故キスした?(What did you do that for?)」
バコール「(あなたと)キスするのがステキか試したかったの(I've been wondering if I'd like it.)」
ボガート「結論は?(What's the decision?)」
バコール「まだ分からないわ(I don't know yet.)」
(再びキスをする)

と、こんな調子です(笑)。

そしてこれが映画初出演のローレン・バコールがたまらなく美しい。彼女が初めて登場するシーンには、私は惚れ惚れしてしまいました。ボガートやバコールがタバコに火をつけるシーンもなかなか魅力的なのですよ。最近は俳優がカッコよくタバコを吸うシーンは、未成年のタバコを助長すると非難が強く、私もある程度はそれには合意します。昔の映画は俳優がタバコを吸うシーンは多く、確かに魅力的に思えてしまいます。まあでも昔はタバコを吸うことが健康的と思われた時代もあった訳で、そういった背景を考えて分別のある大人が楽しむ映画として観ればいいと思います。

この頃は脚本が完成しないまま映画の撮影に入るのは珍しくなく、この作品も脚本が未完成のまま撮影が開始されました。最初はボガートともう一人の女優ドロレス・モランが中心のお話しだったようですが、バコールの魅力がいっきに開花して、脚本が彼女とボガートの話しに修正されていったようです。でもこのドロレス・モランもすごく美しいんですよ。

この映画がアメリカで封切られたのは1945年の1月20日で、その約4ヵ月後にボガートとバコールは結婚しました。ですからこの映画に共演中に二人が急接近したのは明らかで(事実周りの目からも明らかで、監督のハワード・ホークスは少しそれが気に入らなかったようです)、映画を観ながらどこまでが演技で、どこまでが本気なのかを想像しながら観るのも楽しいかもしれません。

ちなみに日本語版ウィキペディアのハンフリー・ボガートの項目に『バコールの自伝によると、ボガートはその死まで、妻のことを「キッド」と呼んでいたらしい(「キッド」とは、2人が初共演した映画『脱出』でバコールが演じた役名)。』などと書かれてますが、これは間違い。ボガートはバコールのことを「ベイビー(Baby)」と呼んでいたし、この「脱出」でのバコールの役名は「スリム(Slim)」です。