マーダーボット・ダイアリー | Mictlan

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ミクトランは、アステカ神話において九層目にある最下層の冥府であり、北の果てにある。

「マーダーボット・ダイアリー」シリーズ。

マーサ・ウェルズ(Martha Wells)、中原尚哉訳、創元SF文庫

 

【出版】

 

『マーダーボット・ダイアリー 上』 以下2篇

 「システムの危殆」All Systems Red

 「人工的なあり方」Artificial Condition

 創元SF文庫、2019年12月

 

『マーダーボット・ダイアリー 下』 以下2篇

 「暴走プロトコル」Rogue Protocol

 「出口戦略の無謀」Exit Strategy

 創元SF文庫、2019年12月

 

『ネットワーク・エフェクト』Network Effect

創元SF文庫、2021年10月

 

『逃亡テレメトリー』Fugitive Telemetry

創元SF文庫、2022年4月

 巻末に以下を併録

 「義務」Compulsory

 「ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地」Home: Habitat, Range, Niche, Territory

 

未邦訳 System Collapse 

 

 

【主人公・マーダーボット(=弊機)の性別問題】

 

創元SF文庫の安倍吉俊氏による中性的なキャラクターのイラスト、及び、『マーダーボット・ダイアリー 下』の渡邊利道氏による解説によって「弊機(へいき)ちゃん可愛い女子説」が当初流布された。

 

 

渡邊氏による初版の解説、冒頭はこうなっている(赤字強調は当方実施)。

 

 本書は、アメリカの作家マーサ・ウェルズの《The Murderbot Diaries》の邦訳である。

 人類が外宇宙に進出した遠未来を舞台に、クローン素材と非有機部品を複合した「構成機体」の人型「警備ユニット」である主人公=語り手が、彼女(といっても警備ユニットに性別はない)が契約関係にある人間たちを守るため奮闘する、テクノ・スリラー風味を加えた冒険アクション宇宙SFの大人気シリーズだ。

 

その後、Web掲載版(および少なくとも第6版以降の文庫)では、可愛い女子説を巻き起こした「彼女」呼びの上記赤字部分が消されている。

 

 

SF界では、性別がないものを女性に寄せて「彼女」呼びにする文化(文化?)が昔からあり、渡邊氏も当初はそれに則って(特にジェンダーに対する深い考察の結果というわけでもなく)解説を書いたのではないか。しかし本作が数多の賞、特に2021年の第7回日本翻訳大賞を受賞し、読者の間口も広がった結果、「彼女? えー女子? 弊機って女子??」的なリアクションが増えてしまい、修正に至ったのではと思料する。

 

なお、安倍吉俊氏のイラストにおける主人公の弊機くんが可愛すぎた結果、翻訳者の中原氏ご自身が、下巻のイラストはメンサー博士(※成人女性)ではないかと誤認されている。(いや、これはどっちも弊機くんでしょう……?)

 

2019年12月4日 中原氏Twitter(X)コメントより引用

「カバーイラストは安倍吉俊さんです。ちょっと震えます。上巻はたぶん主人公、下巻はメンサー博士かな。」

 

これに対し、安倍氏のインスタにて、上下巻とも弊機くんの絵である旨コメントあり。

2019年12月5日 安倍氏インスタコメントより引用

「上下巻とも描かれているのは主人公"弊機"さんです。印象がすごく違う理由はぜひ本編で」

 

 

弊機くんの性別・外見問題は次に続く。