偽善的文言 | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 スナック菓子の袋やアイスのパッケージ、その他諸々の商品の包装紙には「開封時に手を切らないように注意してください」と記されている。今日、給食で包装袋にそう書かれている食べ物がでた。読んでいて違和感を思えたがイマイチどういう事に対する心の摩擦なのかが自分の言葉で表現できずモヤモヤしていた。家に帰り、父親と話をしていく中で明らかになったことがある。対話の中でというよりも、自分が一生懸命その違和感について説明しているうちに考えが整理され、明確になり、そしてその原因を突き止めたという感じだ。

 「開封時に手を切らないように注意してください」を読んだときに、大多数の人はどう感じるだろうか? 僕は「しょうもない。切る人なんているのか?」と半ば呆れた感情を抱く。それは僕の意見だ。他の人はどう感じるかはわからない。
 仮にその袋を開封するときに運悪く、手を切ってしまう人がいるかもしれない。その人はどういう感情を抱くだろうか?僕であれば自分の不注意や不手際に対して憤りを感じたり、大したケガではないだろうから、諦めの気持ちを持つと思う。
 ここで「開封する時に注意しろだなんて、書いていないじゃないか!私のケガはこの商品を作った企業の責任だ!訴えてやる!!!」っていう人はごく少数で、ちょっと変わった人というのが一般的な意見だろう。しかし、この世の中には実際にそういう人がいるのだ。自分の権利ばかりを主張する人が。それこそ「欧米か!!」とツッコミが入りそうだが・・・。
 
 商品を作った企業が「開封時に手を切らないように注意してください」という文言を付すのは、明らかにそんなごく少数の人たちに向けてのコメントである。要は「訴訟対策」ということになろう。ケガした人がいても「だから、『ちゃんと注意してください』って書いていたじゃないですか!」と。
 残念なことに開封時に手を切ってケガをしてしまう人もいるだろう。でもその中の大多数の人がそれによって損害賠償を訴えるような訴訟は起こさない。この文言は「訴訟を起こしそうなごく少数のちょっと変わった人」向けに発せられた言葉であり、ケガを心配をする心遣いのコメントではなく、訴訟対策なのである。そこには優しさも思いやりも丁寧さも礼儀もない。あるのは「保身」だけである。
 
 僕が違和感を感じていたのはそこだった。一見「ケガしないように」と消費者を気遣う優しいように思える文言であるが、その文言には全くその気持ちが込められていない。むしろ訴訟に備えるという専ら「保身」の為の言葉として記されているのである。そのギャップが見えたからこそ、その「偽善」の態度に偽物を感じ、違和感を覚えたのだ。