籾殻 | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 秋が始まる季節にはあたりにキンモクセイの香りが漂っている。僕はこの香りが好きだ。秋の到来を感じさせ、毎年のように今までの秋の記憶が甦ってくる。
 それと同じように今年は冬の到来を感じさせる匂いに気付いた。今では稲刈りも終わり、すっかり寂しくなってしまった田んぼであるが、そこにある。小さく盛られた稲のもみ殻。それを焼く匂いこそが僕の子ども時代から大学を経て、現在へと至る冬の記憶を甦らせてくれるのである。
 小学校時代には学校の帰りに田んぼへ入り、ワラを集めてバク転の練習。中学時代には部活の朝練に向かう途中の通学路や放課後の練習を終えすっかり日も暮れてしまった下校の思い出。高校時代ではいろいろなプレッシャーを感じながら自転車をこいだ川沿いの道。向こうの山には姿は見えなくなったがほんのりと残光を残す夕日。大学時代には初めての一人暮らしのちょっとした孤独感。
 様々な懐かしい思い出が季節の香りに呼び起こされる。