怪獣の話 | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 なんでも食べちゃう怪獣がいた。とてもとても大きな口を持っていて、お腹もぷっくりとふくれている。世界中のあらゆるモノを食べてきたから、そんなお腹になっちゃった。

 特に大好物は人間が持っているやましい心。やましい心であれば種類は問わない。世界のどこにいたってその匂いを嗅ぎつけて丸飲みしちゃうのだ。
 
 そんなある日、世界のあらゆる場所でやましい心の匂いが漂ってきた。怪獣はうれしくなって、それはもう一心不乱に世界中を駆けめぐった。こっちのを食べた途端に世界の裏へ飛んでいく。そして怪獣のお腹はやましい心でお腹いっぱい。それでも世界にはまだまだ食べきれないほどのやましい心があふれている。怪獣は残すことなくすべてのやましい心を食べ終わると、大きなお腹に手をやってゆっくりと腰を下ろした。

 そしてゆっくりと目を閉じて、二度と動くことはなかった。怪獣の頬には涙の跡が残っていた。