こすぎ さんの記事「相場ってランダムウォーク? 」にインスパイアされて、株価はランダムウォークに従うか?という内容でちょっと読み物を書いてみようと思います。
私は昔、とある証券会社にいました。
新卒の私に支店長が、「おい、これ読んでみろ」と渡してくれたのがブラック・ショールズ方程式 の本でした。
支店長はたまたま私と同じ大学の出身の方で、それもあって私に目をかけてくださったのかもしれません。
新人研修が終わってまだ日がたっておらず、同期とともに次々と勉強系の課題が渡される中で、私には分厚い本が一冊付け加えられたのです。
眠い目をこすりながら読み始めたのですが、冒頭部分でいきなり大きな疑問が沸いて来ました。
ブラックショールズモデルの前提となっているのが、「株価はランダム・ウォーク に従う」という仮定です。
ランダム・ウォークとは簡単に言うと、「明日の株価なんてコインを投げるようなもので、わからんよ」というものです。
よく用いられる例えで言うと「テクニカルを駆使してファンドマネージャーが作ったファンドと、サルが銘柄表にダーツを投げて作ったファンドの運用成績は結局同じ」という、テクニカル全否定の理論ともいえます。
読み始めた私は冒頭で早くも「そもそもなんでコイントスを前提にしてるんだろう?相場なんて状況が良かったら上昇するし、悪ければ下落する。未来の確率はその時々で違い、常に1/2なんかじゃないのに」という疑問に直面しました。
「まあいいや、あとでわかるだろ」と思い、もやもやしたまま読み進めましたが、冒頭に感じたそもそもの疑問-株価はランダムなのか?という疑問-については、結局最後まで解消されませんでした。
明日の騰落は確率1/2か?
これに対して、実際の値動きから検証してみたいと思います。
私の手元に、戦後東証再開後(1949年~)の日経平均の日足データがあります。
終値ベースで前日から上がったか下がったかを数値にとると、
総数17561回、上昇9293回、下降8268回、上昇確率53%、下降確率47%となり、偏っていることがわかります。
東証再開初日の終値は176.21
戦後直後から見ると上昇相場なんだから、「偏っていてあたりまえ」という批判も出そうですが、話はそれほど単純ではありません。
いびつなコインを投げているのか?
次に、投げているのが上昇53%下降47%のもともと「いびつなコイン」だったとすると、
連騰する確率は53%×53%=28%、続落する確率は47%×47%=22%となりそうですが、実際のデータを数えると連騰29.5%、続落23.6%となり、どちらもやや高いのです。
連騰と続落を足すと53%となり、50%を上回ります。
つまり上昇と下落が交互に繰り返される確率より、連騰もしくは続落する確率の方が高いのです。
「たまたまじゃないのか?」という批判に答える為に、さらに計算を進めていくと、
3連勝の確率は計算上14.8%となりますが、実際は16.6%
3連敗の確率は計算上10.4%となりますが、実際は11.8%
3連勝と3連敗をを合計すると、正規コインをトスしたときの確率は12.5%+12.5%で合計25%、いびつなコインをトスしたとき確率は14.8%+10.4%で25.2%です。
これに対して実際の確率は16.6%と11.8%を加えると28.4%となり、やはり実際に連騰もしくは連敗する確率は、偶然性から計算される確率より高いという結果になります。
そしてこの傾向は今後も続き、連勝もしくは連敗する確率は、常にコイントスを前提とする確率を上回ります。
もはやいびつなコインを投げていると仮定しても説明がつきません。
戦後の日経平均の値動きを見る限り、株価というのは「連続した値動きをしやすい」性質がありそうです。
過去は未来に影響する?
連続した値動きをしやすいということは、前日までの値動きが少なからず翌日の株価影響を与えていることになり、昨日まで連続した動きをしている場合は、翌日以降その傾向を引き継ぎやすいということになります。
明日の株価は「ランダム」じゃないのでは?という疑問がフツフツと沸いてきます。
過去の株価が未来に影響するなんてことが、果たしてありえるのか?
それともファンドマネージャーはやはり、サルと同等以下なのか?
そのあたりについて、次回さらに検証してみたいと思います。