複数日審査の2日目の朝、先方の管理責任者の方から立ち話の中でこう言われました。
「きのうの〇〇部の審査は、ちょっと楽だったと思いますよ」
審査員としては、少し気になる言葉です。
この言葉にはどのような意味が込められていたのでしょうか。
審査員への“教育的指導”
簡単に言えば、
「ツッコミが足りなかったですね」
ということでした。
「あそこからもう少し踏み込んで質問してくれていたら、受審側のメンバーにも緊張感が走ったと思います。
今回はさっと進んでしまったので、ストレスなく受け答えができていましたよね」
そんなニュアンスのコメントというか、感想というか、鋭い指摘でした。
これは審査員にとって、とてもありがたい顧客からのフィードバックです。
もちろん審査は、こちらにも考えがあって進めています。
ただし審査は基本的に双方向のコミュニケーションです。
今回の審査先は、9回目の更新審査でした。
年1回の審査を受け続けてくださっているクライアントであり、今回の審査は通算27回目ということになります。
それだけ長い関係になれば、クライアント側の担当者も世代交代していきます。
今回指摘をくださった方が27回すべての審査に関わっているとは思いませんが、少なくとも10回以上は審査を経験されているはずです。
また、その会社は年数を重ねているだけのことはあり、非常にレベルの高い管理・運用状態にあることを早い段階で感じ取ることができました。
実際には、20年以上認証を維持しているにもかかわらず、管理レベルに疑問を感じてしまう組織に出会うこともあります。
その意味でも、同社の運用の確かさは印象的でした。
そのような状況の中での今回の顧客からの指摘でした。
審査慣れしている組織の着眼点
管理責任者の方は、さらに具体的に
「クレーム対応へのツッコミを入れるとよかった」
というところまで言ってくださいました。
確かにその部分の深掘りは行っていませんでした。
前年の審査の引き継ぎ情報から、同社がクレーム対応の強化に問題意識を持っていることは把握していました。
しかし当日朝の初回会議で、社長の問題意識が内部コミュニケーションの強化にあるという話が出たことで、意識がそちらに向いてしまいました。
その結果、営業部門の審査時間ではクレーム対応の深掘りという問題意識が欠落してしまい、今回の指摘を受けることになりました。
このようなフィードバックを直接いただける機会は本当に貴重です。
通常であれば審査という関係性の中で、組織の方から口頭で率直なコメントをいただくことはほとんどありません。
事後アンケートはどの審査機関でも実施されていますが、本音が書かれることは少ないというのが実情でしょう。
だからこそ、このような声は大切にしたいものです。
自分のスタンスと相手の状況とのギャップ
その上で、もう一つ私の考えも記しておきます。
前述の指摘を否定したいわけではなく、審査にはさまざまな視点があるということを感じていただきたいからです。
今回の審査対象は営業部門でした。
営業として最も重視してほしいことは、売上目標をどのように達成するか、さらに売上を伸ばすためにどのような工夫を行うかという点です。
そのためには、自社理解や製品理解を深め、自社の強みを伸ばし、他社との差別化を打ち出すといった積極的な取り組みが求められます。
さらに踏み込めば、積極的に行動すればするほど失敗も生まれますし、それがクレームにつながることもあります。
しかしミスやクレームを恐れて行動が慎重になりすぎると、営業として本来狙うべき成果へのエネルギーが弱まります。
このバランスをどう取るかが営業に求められる重要な感覚だと考えています。
もちろん「営業の本源的価値に踏み込んだ審査をしていたからクレーム対応の確認ができなかった」と言いたいわけではありません。
同社の問題意識を踏まえれば、今回は私の審査力量の不足を露呈したと言えるでしょう。
ただし、部門の本質的価値とは何かを考え続け、それにふさわしい審査とはどのようなものかに挑戦し続ける視点も忘れてはならないと感じています。
今回の反省点
今回の審査の反省点は、
審査時間の冒頭で部長から部門運営方針を十分にヒアリングできなかったこと
にあります。
相手組織の問題意識や課題意識を正確に押さえること。
それが審査の質を左右する重要なポイントであることを改めて実感しました。
次回はしっかり取り組みたいと思います。