こんにちは。

本シリーズ、今回で10回目になります。

そしていよいよ今回で完結です。

 

 

ISO9001の運用で、いまだに根強く残っている誤解があります。

それは
「ISOマニュアルは必ず作らなければならない」
という思い込みです。

 

確かに昔のISO9001では、品質マニュアルは“必須”でした。
 

でも2015年改訂で、この縛りは完全に消えました。

つまり今は、
マニュアルは作っても作らなくてもいい。

ただし、ここでまた別の誤解が生まれます。

  • 「必須じゃないなら、もういらないよね」
  • 「マニュアルなんて時代遅れでしょ」

 

この“短絡的な不要論”も、実は大きな誤りです。

 

マニュアルは、
組織が必要と判断するなら作ればいいし、作るなら“現場で使えるもの”にする。
これが正しい理解です。

 

 

そしてマニュアルを含む文書体系は、
組織の業務を支える基本的な枠組み
として、維持し続ける必要があります。

 

今回はシリーズ最終回として、
文書体系を“生きた仕組み”として維持するための組織的な仕組みをまとめます。

 

 

 


1. 文書体系は「組織の仕組みを見える化したもの」

マニュアルや規程、手順書は、ISOのために作るものではありません。
組織が日々の業務を安定して行うための“見取り図” です。

  • マニュアル(一次文書):全体像
  • 規程(二次文書):組織のルール
  • 手順書(三次文書):現場のやり方
  • 記録:実行の証拠

この構造が整っていることで、
組織の仕組みが誰にでも理解できるようになります。

 

 


2. 文書体系を維持するには「責任の明確化」が不可欠

文書は、作った瞬間から古くなり始めます。
だからこそ、維持するための仕組みが必要です。

✔ 文書ごとの主管部署・主管者を明記する

  • マニュアル:品質保証部門など
  • 規程:各プロセスの責任部署
  • 手順書:現場の担当部署

✔ 年1回のレビューをルール化する

  • 組織変更
  • 業務改善
  • 顧客要求の変化
  • リスクの変化

見直し=必ず改訂、ではありません。
「改訂の要否を確認する」ことが見直しの第一歩 です。

 

 


3. 文書体系は「現場の声」で育てる

文書は、現場とズレた瞬間に使われなくなります。
だからこそ、改訂のたびに現場の声を反映させる必要があります。

✔ 現場の声を反映する仕組み

  • 改訂プロセスの明確化
  • 改善提案制度
  • 部署横断の文書レビュー会議
  • 内部監査でのフィードバック

文書体系は、現場の声を取り込みながら育つ“生き物”です。

 

 


4. 文書体系を“業務の基本”として教育する

文書は教育の場で活用されることで、
組織の共通言語 になります。

✔ 教育で扱うポイント

  • マニュアルで全体像を理解する
  • 規程で組織のルールを理解する
  • 手順書で具体的な作業を理解する

文書を渡して「読んでおいてね」では、絶対に浸透しません。
教育に組み込むことで、組織全体の理解度が揃い、業務が安定します。

 

 


5. 文書体系を維持するための「改善(PDCA)サイクル」を回す

文書体系は、PDCAを回すことで進化します。

✔ 改善サイクルの例

  1. 現場で“もやもや”が起きる
  2. 改善のきっかけと認識する
  3. 現場で改善が起きる
  4. 手順書に反映する
  5. 必要に応じて規程を見直す
  6. マニュアルの全体像に影響があれば更新する
  7. 内部監査で整合性を確認する

このサイクルが回ることで、
文書体系は常に“現場と一致した状態”を保てます。

 

 


6. 「マニュアル必須論」と「マニュアル不要論」を超える

最後に、このシリーズの原点に戻ります。

✔ マニュアル必須論は誤解

  • 2015年改訂で要求事項から外れた
  • ISOは文書主義から脱却した

✔ マニュアル不要論も誤解

  • 組織の全体像を示す文書は依然として有用
  • 文書体系の“核”として機能する
  • 教育・内部監査・改善の基盤になる

✔ 正しい理解

  • マニュアルは、必要なら作ればよい
  • 作るなら“現場で使えるもの”にする
  • ISOは文書を作るための仕組みではなく、
    組織の仕組みを整え、維持し、改善するための枠組み
 

 

まとめ:文書体系は“組織の基盤”として維持する

ISOマニュアルが必須ではなくなった今、
問われているのは「作るかどうか」ではありません。

“どう維持し、どう活かすか”です。

  • 文書体系は組織の見取り図
  • 責任者を明確にして維持する
  • 現場の声を吸い上げ育てる
  • 教育で活用する
  • PDCAで進化させる
  • 必須論・不要論を超える

文書体系は、組織の基本的枠組みを支える“基盤”です。
ISOは、その基盤を整え、維持し、組織の成長を支えるための仕組みなのです。

 

 

 

作成するマニュアルをはじめとした文書をどのように組織経営に活かしていくか。

正解はありません。

御社の独自のスタイルで全く構いません。

あくなき追求、追究をしていただきたいと思っております。

 

 

(了)

 

 

 

原文はこちらです。