今日もISOマニュアル、ISO文書の話の続きです。
ISO9001の文書体系は、一度作って終わりではありません。
組織の変化や業務改善に合わせて、定期的に見直し・再構築していくことで、
-
使いやすい
- 迷わない
- 更新しやすい
そんな文書体系へと進化させることができます。
一方で、現場からはこんな声もよく聞きます。
- 文書が増えすぎて手がつけられない
- どこから見直せばいいかわからない
- 文書体系が複雑で整理が進まない
今回は、そうした悩みを抱える組織に向けて、
文書体系を無理なく見直し、再構築するためのステップ を整理してみます。
前回の
「文書体系をシンプルに保つための運用ルール」
は、日常的な改訂や運用ルールを整える話でしたが、
今回の内容は “本格的な改善・抜本的な見直し” を想定しています。
「そろそろ大きく整理し直したほうがいいかな」と感じたときに、ぜひ参考にしてください。
1. 現状の文書を“棚卸し”する
最初の一歩は、現状を見える化すること です。
まずは、今ある文書をすべて洗い出し、一覧にします。
棚卸しで確認するポイント
- 文書名
- 文書番号
- 種類(一次/二次/三次)
- 主管部署・主管者
- 最終改訂日
- 現場での使用状況
- 重複の有無
棚卸しをすると、
「こんな文書がまだ残っていたのか」
「誰も見ていないのに、形式だけ残っている」
といったことが、はっきり見えてきます。
ここで初めて、文書体系の課題が輪郭を持ち始めます。
2. 文書を「分類」し直す
棚卸しができたら、次は文書を 一次・二次・三次文書に分類し直す 段階です。
分類の基準
- 一次文書(マニュアル):理念・全体像(Why/What)
- 二次文書(規程):組織のルール(What/Who)
- 三次文書(手順書):現場のやり方(How)
この作業をしていると、よくこんな“ズレ”が見つかります。
- マニュアルに手順が書かれている
- 規程に細かい作業内容が書かれている
- 手順書に理念が書かれている
このズレを正すだけでも、文書体系はかなりスッキリします。
ここではまだ「本格的な作り直し」までは踏み込まず、
交通整理レベルでOK と考えて進めてください。
3. 文書の“重複”を洗い出す
次に、文書同士の 重複 を確認します。
よくある重複
- マニュアルと規程に同じ説明が書かれている
- 規程と手順書に同じ手順が書かれている
- 手順書と記録様式に同じ項目が書かれている
重複を見つけたら
- 内容を“どこか1か所”に集約する
- 他の文書には「参照先」を記載する
重複がなくなると、更新漏れが一気に減り、文書体系が軽くなります。
ここは「言うは易く行うは難し」の部分です。
時間も根気も必要ですが、できるだけ丁寧に・できるだけシンプルに を意識して取り組んでください。
特に、細かい説明を文書で積み上げるよりも、
帳票の設計そのものを工夫して、自然と必要な運用ができるようにする ほうが、結果として運営がラクになることも多いです。
4. 文書の“必要性”を評価する
次のステップは、
その文書が本当に必要かどうかを見極めること です。
評価の基準
- 現場で実際に使われているか
- 規程や手順書と役割が重複していないか
- ISO要求事項として必要か
- 組織の運営にとって必要か
不要な文書は、ためらわずに廃止します。
文書体系をシンプルに保つには、
「増やさない」だけでなく 「減らす」ことも重要 です。
不要文書を見つけるコツ
- 何年も改訂されていない文書がないかを見る
もちろん、「改訂されていない=即廃止」ではありません。
ただし、長期間誰も手を入れておらず、誰も問題視していない文書は、
実際には使われていない可能性が高い と考えてよいでしょう。
5. 文書体系の“構造”を再設計する
分類・重複整理・必要性評価が終わったら、
いよいよ 文書体系全体の構造を再設計 します。
再設計のポイント
- 一次 → 二次 → 三次文書の流れが明確か
- 文書番号体系が統一されているか
- 文書名がわかりやすいか
- マニュアルから規程・手順書へ紐づけられているか
- フォルダ構造がシンプルか
文書体系は、組織の “業務の見取り図” です。
構造が整理されると、組織全体の仕組みがぐっと理解しやすくなります。
6. 文書の“更新ルール”を整備する
文書体系を再構築したら、それで終わりではありません。
それを維持するためのルール が必要です。
更新ルールの例
- 文書ごとに主管部署・主管者を明記する
- 年1回のレビューを必須とする
- 改訂履歴を必ず残す
- 現場の改善と文書更新を連動させる
文書体系は、作った瞬間から“古くなり始める”ものです。
更新ルールがあることで、常に “生きた文書体系” を保つことができます。
7. 文書体系を“現場に戻す”
最後のステップは、
再構築した文書体系を現場に戻すこと です。
現場への展開方法
- 取り組みの趣旨を、社内のさまざまな場で発信する
- リリース前に現場での再確認の機会をつくり、意見を反映する
- 教育・研修で、文書体系の全体像を説明する
文書は、“現場で使われてこそ価値がある”ものです。
そのためにも、
「上から押し付けられた文書」ではなく、
「自分たちの声・主張が反映された文書だ」と感じてもらうこと が、とても大切です。
まとめ:文書体系の見直しは“整理”がすべて
文書体系の再構築は、決して難解な作業ではありません。
必要なのは、次の7つのステップを丁寧に進めることだけです。
- 文書の棚卸し
- 文書の分類
- 重複の洗い出し
- 必要性の評価
- 文書体系の再設計
- 更新ルールの整備
- 現場への展開
この流れを踏むだけで、ISO文書体系は驚くほどシンプルになり、
“使われる仕組み”へと生まれ変わります。
そして何より大事なのは、
必ず現場の人たちを巻き込むこと。
それが、文書体系を「生きた仕組み」に変える、いちばんの鍵です。
