こんにちは。
今日もハーモニー経営に関する記事の第4話です。
前回からの続きになります。
「経営方針は毎年発表しているのに、現場の動きが変わらない」。
そんなもどかしさを抱える経営者は少なくありません。
一方で現場の社員に聞いてみると
「言葉は聞いたけれど、具体的に何をすればいいのか分からない」と返ってくる。
この“認識のズレ”こそが、組織を動かなくしてしまう根本原因です。
経営陣は方向性を語っているつもりでも、現場には“抽象的な理想の話”にしか聞こえない。
その結果、「自分ごと化」されず、日常業務の中で埋もれてしまうのです。
経営メッセージが浸透しないのは、社員の理解力の問題ではありません。
「伝えたつもり」で自己完結してしまう、経営側の努力不足にこそ原因があります。
「見える対話」とは何か
「見える対話」とは、単に情報をオープンにすることではありません。
経営層と現場の間で、理解と意図が可視化される双方向のコミュニケーションを指します。
文書やプレゼン資料で共有するだけでは、一方通行の伝達にすぎません。
「どう受け取ったか」「どう行動につなげるか」を現場の言葉で確認し合う──
このプロセスを含んでこそ、“見える対話”なのです。
たとえば、ある企業では方針発表の後に各部門が自分たちなりの行動テーマを策定し、その根拠を経営層に説明する場を設けています。
経営側は「現場がどう理解しているか」を目で確かめられ、現場は「自分たちの言葉で方針を語る」機会を得る。
この往復こそが“見える対話”の本質です。
「理解されないのは努力不足」という発想の転換
「何度も説明しているのに伝わらない」と嘆く経営者もいます。
しかし、現場が理解できないということは、経営側の伝え方が届いていないということ。
つまり、それは現場の問題ではなく、経営側の課題なのです。
「理解してもらえない」と言う前に、「なぜ伝わらなかったのか」「どの言葉が届かなかったのか」を振り返る。
この姿勢があって初めて、信頼関係は動き出します。
抽象語を現場語に翻訳する努力が欠かせません。
「利益率の改善を目指す」ではなく、「同じ材料で無駄を減らし、次の改善に回せるようにする」と置き換える。
経営が“わかりやすく伝える”ことを怠ると、現場は「またお題目だ」と感じ、信頼が薄れます。
逆に「分かってもらえなかったのは自分たちの努力不足」と受け止めると、言葉の質は劇的に変わり、組織の空気も変わります。
対話が生まれる仕組みをデザインする
「見える対話」は自然発生的には起きません。
仕組みとして設計しなければ、忙しさの中で埋もれてしまいます。
効果的なのは、定例的な“方針共有ミーティング”を仕組み化すること。
そして、経営が話す時間より、現場が話す時間を多くとること。
現場の意見や疑問に対し、経営がその場で補足説明や再解釈を行う。
これにより、双方の認識が「その場で一致する」経験を積み重ねられます。
また、経営層が現場に足を運び、直接対話することも有効です。
資料説明ではなく、その職場で起きていることを感じ取り、理念や方針をどう落とし込むかを考え、社員と向き合う。
経営が聞き手に回ることで、現場の言葉が方針にリアリティを与えます。
この双方向のやり取りが「見える対話」を現実のものにしていきます。
「聞く」から始まるリーダーシップ
「自分の考えをしっかり話すことがリーダーシップだ」と思い込む経営層は少なくありません。
もちろん方針を明確に打ち出すことは大切です。
しかし、聞く力のないリーダーシップは、共感のない独演会に終わってしまいます。
現場が語る「現実の言葉」を受け止め、それを方針の中にどう位置づけ直すか。
この姿勢が「共に考える経営」を形づくります。
社員は、自分たちの声が経営に届いていると感じた瞬間、方針を“自分のもの”として受け止め始めます。
対話とは、理解を強要する場ではなく、信頼を更新し続ける場なのです。
組織が変わる瞬間
経営と現場の信頼関係は、特別なイベントで築かれるものではありません。
むしろ、日々のコミュニケーションの中で「経営がどう向き合っているか」を社員が感じ取ることで育っていきます。
たとえば、経営会議で決定した内容をわかりやすく社内に共有し、その内容について現場から質問や意見を受け付ける。
それだけでも空気は変わります。
さらに大切なのは、経営側が自らの説明不足を認める勇気です。
「意図が伝わっていなかった」「この言葉は誤解を生んだ」と正直に話すことで、社員は“本気で伝えようとしている”と感じ、対話の熱が生まれます。
組織が変わる瞬間とは、経営が完璧に語れたときではなく、
“伝わらなかったことを自覚し、もう一度語り直そうとしたとき”なのです。
まとめ:見える対話が信頼を育てる
経営方針を伝えるとは、単に情報を下ろすことではありません。
理解できる形で共有し、受け止め方を確認し、共に行動を設計していく。
この往復のプロセスこそが「見える対話」の真価です。
経営が「伝えた」ではなく「伝わった」を確認する。
理解されなかったら、もう一度言葉を探し直す。
その粘り強い姿勢が、現場との信頼を積み重ねていきます。
見える対話とは、経営が「上から語る」のをやめ、「隣で語る」姿勢を持つこと。
その一歩が、組織を静かに、しかし確実に変えていくのです。
🎵 ハーモニー経営とは、対話をベースとして、人と人がつながっている経営です。
(つづく)
詳細原文は
ハーモニー経営コンサルティングホームページに掲載中。
