こんにちは。
今日もハーモニー経営に関する記事の第2話です。

前回の続きになります。

 

 

多くの企業で、成果を妨げる最大の壁は「外部競争」ではなく、社内の分断です。
 

営業と生産、技術と品証、経理と現場――それぞれの部門が自分の目標を追ううちに、組織全体の調和が崩れてしまう。

その結果、情報は閉じ、人のつながりは薄れ、判断は遅れ、協力すべきところで摩擦が生まれます。
 

どんなに優れた戦略や理念を掲げても、現場ではしばしば壁となって立ちはだかるのです。

そこで必要になるのが「ハーモニー経営」。
 

部門同士が響き合い、組織全体で一つの音楽を奏でるような考え方です。
今回は、部門間の“ハーモニー”を実現するための実務的アプローチをご紹介します。

 

 

 

縦割り組織が生まれる理由

 

多くの組織は機能上、「部署が分かれている」ことで仕事をうまく分担しています。
大きな企業になれば、多数の部署が存在し、それぞれが責任をもって業務を遂行しています。これは組織運営にとって必要なことです。

しかしながら、「縦割り」という言葉はネガティブな意味で語られることが多いのも事実です。
この際に語られる内容のポイントは「分断」。もう一歩踏み込めば、目的と価値観の共有が途切れることにあります。

各部門が自部門のKPIや成果目標を追うあまり、全体最適よりも部分最適が優先される。
組織が大きくなるほど、意思疎通のコストが上がり、情報の断絶が起こるリスクが高まると感じる方も多いでしょう。

特にISOのマネジメントシステムを導入している企業では、「役割分担の明確化」が逆に硬直化を招くことさえあります。

結果として…

  • 他部門への理解が乏しく、協働に抵抗感が生まれる
  • トラブルが起きても自部門でできることに積極的に取り組まない
  • 「自分の仕事はここまで」と線を引く文化が強まる

こうした現象が重なれば、組織は“音の合わない合唱団”になってしまいます。

 

 

 

部門間ハーモニーを生み出す3つの鍵

 

1. 共通目的の再認識

部門間の連携を生む第一歩は、全員が共通して目指す「企業の目的」に立ち返ることです。
経営理念やビジョンは、企業の「存在目的(Purpose)」を示すもの。

例えば「お客様の幸せを支える企業であり続ける」という理念は、企業の“なぜ存在するのか”を定義しています。
この目的を出発点として「経営方針」が策定されます。

目的 → 方針 → 目標 → 行動
この一貫した流れを設計することで、部門の役割と貢献の方向性が明確になります。

共通目的が共有されると、各部門は“自部門の成果”を上げるために他部署との協力が必要であることを再認識します。
その結果、コミュニケーションが生まれ、全社としての成果をともに考える度合いが強まります。

営業部門が「契約件数」だけを追うのではなく、技術部門や品質部門と協働して「顧客満足」という共通の成果を目指すようになる。
この変化こそが、縦割り組織の弊害を超える鍵です。

 

 

2. 情報の響き合う場をつくる

ハーモニーを生み出すには、部署同士のコミュニケーションを増やすことが第一歩です。
ただし、単に会議体を設けるだけでは不十分。

必要なのは、異なる部門の“音”が混じり合い、響き合う場の設計です。

  • 管理職層が積極的に参画する
  • 会議では“報告”ではなく“対話”を大事にする
  • 成果だけでなく課題・失敗も率直に出せる心理的安全性を担保する
  • 杓子定規な会議運営にせず、人同士のつながりを持てるようにする

効率化を追求しすぎると、人間味がなくなります。
会議前の数分でプライベートな会話をするなど、ちょっとした工夫が心を和ませるのです。

 

 

3. 人を介した橋渡し役を育てる

仕組みだけでなく、人同士のハーモニーも欠かせません。
部門間の調整役は単なる「連絡係」ではなく、“翻訳者”のような存在です。

技術者の言葉を営業マンにもわかるように言い換える。
現場の声を経営層に伝える。
こうした橋渡しができる人材を評価し、育てることが重要です。

部門横断プロジェクトへの参加機会やジョブローテーションを通じて、理念の理解者から実践者へと成長していく。
その結果、組織は指示型から自律型へと変わっていきます。

 

 

ハーモニー経営の実務的アプローチ

  • 内部コミュニケーションの仕組みを見直す
  • 方針管理や会議資料に“横ぐし”を設定する
  • 教育体系に“協働力・対話力”を組み込む
  • ISO内部監査に“部門間協働”の観点を追加する

これらはすぐに導入できる“静かな革命”。
制度を整えることで、ハーモニーが文化になる下地が生まれます。

 

 

ハーモニーがもたらす組織の変化

  • 会議で「自部門報告」ではなく「全体最適への提案」が出るようになる
  • 他部門をライバルではなく仲間と見るようになり、現場の士気が高まる
  • 営業と技術、品証と製造などが一体で動くことで、クレーム対応のスピードが上がり、信頼が積み重なる

内部のハーモニーが、顧客とのハーモニーへとつながります。

 

 

 

 

まとめ:ハーモニーは“共鳴”から始まる

縦割りをただ敵視するのではなく、響かせ合うことがハーモニー経営の本質です。
部門の個性や専門性は消すのではなく、調和させる。

仕組み・場・人を通じて“共鳴”を設計し、組織全体で一つの音楽を奏でる。
企業の未来は、その響き度合いによって決まります。

 

 

 

(つづく)

 

詳細原文は

ハーモニー経営コンサルティングホームページに掲載中。