こんにちは。
前回は、審査を受ける価値についての総論から、更に深堀りしていくと、審査をする側、審査を受ける側双方に努力の余地があることを感じていただくためのご説明をいたしました。
今回はそこから一歩踏み込んで、審査側の課題について考察を進めます。
皆様ご承知のようにISO審査はあくまで民業ベースの活動です。
公的な許認可事業とは全く異なり、自社の経営管理状態を、審査を受けたい組織が申し込みをするとともにお金を支払うことで成立しているビジネスモデルです。
ざっくり言ってしまえば、審査機関はサービス提供者、審査を受ける側はお客様、という関係です。
ISOの黎明期は取りたい、取れないと困る、という組織ニーズが全面に出ていたため、審査をする側が完全に上位者の立ち位置を取ることができましたし、実際取っていました(高じて接待するのが当たり前という感じになって、お客様クレーム出たことで、ようやくその低いレベルから脱しています)。
ですが、それはあくまで過去の話。
そして今その反動と言ってもよい状態が生まれています。
何かというと、お願いして認証を取得してもらう、あるいは維持してもらう、という世界です。
サプライチェーンの中で、上位工程から要請で認証を取得、維持し続けなければならない会社もグローバルベースで考えれば一定数以上あります。
ですが、そのようなサプライチェーン内での要請に基づかない、つまり自主的な判断で認証取得の経営判断をされた会社にとっては、認証を継続するかどうかは経営判断一つです。
実はこのビジネス社会の当たり前の原理原則がどこかに行ってしまっていないか、という大きな課題がISO業界には横たわっています。
認証維持の価値をあまり感じないものの、ズルズルと審査を受け続けてしまっている、という会社です。
審査会社も民間の営利企業ですから、そうであれば結構ですとは当然なりません。そのような企業に対しては、あの手この手を使って継続をお願いするのは、審査会社の経営から考えれば当たり前のことです。
しかし、このような話をすればどこかおかしい、と誰もが感じることでしょう。
そうなのです。
お願い営業の段階に来てしまうと、もうその商品、サービスの将来性、発展性は言葉悪く言えば見えてしまっている、ということです。
経済原理の基本である、提供する価値が相手によって意味のあるものだからこそ、その対価を支払う価値がある、という部分が崩れてしまっている、その問題意識、危機意識がどれだけあるか、というステージにISO業界はきているのです。それもつい最近そのような状況になってしまった、というレベルではじつはありません。
ISO審査で提供できる価値とは何なのか?
業界内でも議論は当然あります。
ですが、ある時期、その議論がかなりされましたが、残念ながらその動きは尻すぼみ、と言わざるを得ません。
では現場で頑張る審査員一人ひとりの問題意識、危機意識はどうなのか。
それはまだ私では語る資格はありません。審査現場を見ている量があまりにも少ないからです。
では、もう一段上のレベルの関係者の間ではどうか、というとバラバラと言わざるを得ない、という認識でいます。
一審査員が現場でできることには限りがあります。
ですがその中で、どれだけ審査員側が組織にとって本当に認証継続の勝ちがある審査とはどのようなものか、ということを経営者視点で考えていくことを放棄してはいけないわけです。
聞こえてくる話、という域を出ませんが、審査員は経営者インタビューが苦手、という一般論があります。
技術のことは詳しいが、経営、マネジメントという観点では未経験故に臆してしまうという部分があることもわかることはわかります。
だからこそこの部分をどうしていくか、ということをもっともっと多くの知恵を集めて議論検討しなければ行けないでしょう。
審査をする側からの視点に基づいて少し考察をしてみました。もうここまでで十分かもしれませんが、もう少し最後に審査を受ける側の視点についても追加的に論じてみたいと思います。
次回に続けます。
イラスト引用元
Image by <a href="https://www.freepik.com/free-vector/iso-certification-illustration-with-people-notepad_10329152.htm">Freepik</a>