前回、前々回で、ISOの審査を行う認証機関(審査機関)にはどのようなところがあるのか、そしてそれぞれの審査機関は、認定機関という上部団体からお墨付きを得ていることで国際的にも信用、信頼される機関としての活動を行っているということへの理解を深めていただいたと思います。
今回は、実際に審査機関を選ぶ上での判断基準、要素について可能な限りについてのご説明をしていきます。
今、「可能な限り」と記しました。
含みを持たせた言い方で恐縮ですが、さすがに立場上、すべてをここに記すことはできません。その点はご容赦いただくとともに、ご理解をどうぞよろしくお願いいたします。
個別にお会いするときなどであれば、その時にはお話できる部分は増えますが、あくまでブログ上では、ということでよろしくお願いいたします。
念のため、ダメ元でAI先生にも聞いてみました。
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Q: 日本で活動しているISOの審査機関が多数あることは教えていただきましたが、その違いがよくわかりません。
料金や審査方針の違いがあるのではないかと思いますが、ご存知のことはありますか。
A:
ISOの審査機関は、それぞれ異なる料金や審査方針を持つことがあります。以下に、審査機関間の違いや特徴について一般的な観点から説明しますが、具体的な対比まではできませんので、詳細な情報は各審査機関の公式ウェブサイトや資料を参照することをおすすめします。
1.料金体系の違い:
各審査機関は独自の料金体系を持ちます。これには審査の種類(初回認証審査、監査審査など)や組織の規模、業界などによって変わることがあります。料金には審査費用の他に、証明書の発行費用なども含まれる場合があります。
2.審査方針とアプローチ:
審査機関は審査方針やアプローチを持ち、これが組織の文化や価値観に影響を与えます。審査の厳格さや柔軟性、改善提案のスタンスなどが異なる場合があります。一部の審査機関は「プロセスアプローチ」に重点を置き、組織のプロセスの改善と効率化に焦点を当てることがあります。
3.審査員の資格と経験:
審査機関は、審査員の資格と経験を管理しています。審査員の資格や業界知識、経験が審査の品質に影響を与えます。一部の審査機関は審査員のトレーニングや認定プログラムを提供し、高い専門性を持つ審査員を育成しています。
4.国際的な認定:
一部の審査機関は国際的な認定機関から認定を受けています。例えば、UKAS(英国認証機関認定審議会)やANAB(アメリカ国家認定委員会)などがその例です。これにより、その審査機関が一定の品質基準を満たしていることが示されます。
5.業界専門性: 特定の業界に特化した審査機関もあります。例えば、医療機器、自動車産業、航空宇宙などの業界に特化した審査機関があります。業界の専門知識や要件を理解し、適切な審査を行うことができます。
これらは一般的な要因ですが、実際の審査機関によってはこれら以外の特徴や違いも存在するかもしれません。組織が審査機関を選ぶ際には、その組織の特性や目標に合った審査機関を選ぶことが重要です。審査機関とのコミュニケーションや相談を通じて、最適な選択肢を見つけることが大切です。
Q:
ありがとうございます。よくわかりました。そうすると審査料金などは1社1社自分で調べていかないといけないのでしょうか。
A:
はい、審査機関の料金や詳細な情報は、基本的には各審査機関の公式ウェブサイトや資料を調べることで得ることができます。審査料金や審査のプロセス、審査員の資格などの詳細情報は、審査機関ごとに異なる可能性がありますので、組織に合った最適な審査機関を選ぶためには、以下のステップが役立つかもしれません。
① ウェブサイトの調査:
各審査機関の公式ウェブサイトを調査し、審査料金や審査の詳細情報を確認します。審査機関のウェブサイトには、料金表や審査プロセスの説明、審査員のプロフィールなどが掲載されていることが多いです。
② 資料の入手:
審査機関に資料請求を行うことも一つの方法です。資料には審査料金やサービスの詳細などが記載されています。資料請求は審査機関のウェブサイトや問い合わせ先から行えます。
③ 問い合わせ:
審査機関に直接問い合わせて、料金やプロセスに関する詳細を確認することも可能です。問い合わせの際には、組織の要件やニーズに合った情報を提供して、適切なアドバイスや提案を得ることができます。
④ 比較と検討:
複数の審査機関の情報を収集し、料金や審査方針、審査員の資格などを比較検討します。組織のニーズや目標に合った審査機関を選ぶために、細かい点までよく考慮することが大切です。
審査機関を選ぶ際には、料金だけでなく、審査機関の信頼性や専門性、審査プロセスの透明性なども考慮して、組織に最適な選択を行うことが重要です。また、審査機関とのコミュニケーションを通じて、自身の要件や疑問を明確にし、適切な情報を得ることが大切です。
Q:
はい、わかりました。あなたであってもそれぞれの審査機関の料金についてはわからない、情報が全くない、ということなのですか。
A:
申し訳ありませんが、私のデータベースには具体的な審査機関ごとの料金情報は含まれておらず、最新の料金情報も提供することができません。審査機関の料金は時期や地域、審査内容などによって変動することがあり、また各審査機関が独自の料金体系を持っているため、具体的な情報は各審査機関の公式ウェブサイトや資料から確認する必要があります。
料金情報は時折変更されることもあるため、具体的な情報を入手するためには審査機関と直接コンタクトを取るか、公式情報を確認することが大切です。審査機関はお問い合わせに対して詳細な情報を提供してくれるはずですので、料金やプロセスに関する疑問点を直接審査機関に尋ねてみることをおすすめします。
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という大体想定通りの回答でした。
回答内容としては概ね適切です。文章は相変わらず大変素晴らしい書きぶりです。
唯一注意が必要な点は、最初の質問で出てくる回答の「4.国際的な認定」の部分です。
ここは、以下の認識を確実に持ってください。
認定機関からの認定を受けずにISO審査の活動を行っている機関が現在出始めています。
そのような機関からISOの審査を受けて認証を取得したとしても、海外等からはISOの認証を取得しているとは認められません。
たとえは悪いかもしれませんが、筆者個人があなたの会社にお邪魔して、ISO審査をさせていただき、「大丈夫です。ISOの要求事項に対して御社が全項目適合しています」として個人名の証書を出したとしても、対外的に効力を持たないのと同じ、ということです。
あくまで相対契約の中であれば意味を持ちますが、第三者が効力を認めるために、国際的にISOの認定・認証制度は作り上げられています。
その枠組み当てはまらないものは「プライベート認証」という言い方をしています。
十分にご注意ください。
さて、では本題に戻ります。
AI先生に質問しても答えには全く近づきませんので、ここは2023年現在の業界事情としてお話します。
まず審査料金ですが、機関によっての値段差は随分あります。
まずその値段の示し方ですが、通常は審査員一人が1日の審査を行った場合の料金として比較検討します。
具体的に申し上げると、1日あたり10万円を切る値段の安い審査機関から、20万円前後の値段の高い審査機関まであります。
その値段差はなんと、3倍以上。
100万円の車を買うのと300万円の車を買う違いで考えてみましょうか。
今の日本であれば、ファミリー用の車を買おうと思えば、予算100万円であれば中古車から選ぶしかないでしょう。一方で、300万円の予算があれば新車も選択肢に入ります。
どちらであっても信頼できるディーラーからの購入であれば、家族で出かける際に利用する、という目的の達成はできる、と考えてください。
両者の違いは何でしょうか。
新車を購入できる、という高揚感や、故障の可能性の違いなど、値段が3倍も違えば、当然得られる便益もかなり変わります。
誰もがそれがわかるからこそ、今は以前とは少々状況変わってきているかもしれませんが、新車へのあこがれ、というものを多くの人が抱くと言ってよいでしょう。
ではISO審査における3倍の値段差はどのように顧客側に受け止められているのでしょうか。
ここは直接のユーザーであるお客様の声、というのはなかなか出てこないものなので、ある程度は推測も交えての話になるのですが、
まず、きちんと認定機関からの認定を受けて活動しているISO審査機関からの認証取得、という点は共通として考える点をお含みおきください。
そうです。高いところでも安いところでも、どちらの機関も認定をしっかり受けていれば、発行される登録証自体は、費用が安い、高いに関係なく、日本国内そして日本国外どちらであっても、正規のISO認証を取得している企業としてのお墨付きを得ることができます。
つまりそこには、認証の価値自体の差が見えてこない、ということになります。
登録されている、という価値自体は全く同じ、ということになってしまうのです。
少し脱線します。
私が若かりし頃、スキーのバッジテスト(検定)を受けることがマニアの間ではかなり流行していました(今でもバッジテストを目指す方はもちろんいらっしゃいますが)。
多くの方が目指すのが上級者として当時であれば誰もが認知してくれる1級取得だったのですが、どこのスキー場で検定を受けても、当然料金は一緒ですし、判定基準も公開されているので同一です。
ですが・・・・・
そうなんです。スキー場によって、取得が困難というところから比較的やさしいというところまで、人の主観的判断が排除できない性格のものであるがゆえに差があると言われていました。もちろん専門家の方々は肯定しませんが。
そして誰もが認知していることが、あのスキー場で1級が取れたらすごい、というスキー場がありました。おそらくスキーにのめり込んだことがある方であればそれがどこのスキー場かおわかりになると思います。
このように、同じ1級取得、ということでも価値の違いがマーケットで認知されるようになるとまた違った意味が出てきますが、ISO審査の場合は、料金の安いA審査機関から認証を取得しても、料金の高いB審査機関から認証を取得しても、その違いが意識されることは、私が知る限りはありません。
そうなると、多くの組織は、対外的に効果は同じなのだから、料金の安い審査機関から審査を受けよう、ということになってしまいます。
これがこの10年程度、ISO審査の現場でずっと続いてきたことなのです。
それこそ30年くらい前の黎明期は、審査員に払うお手当も弁護士報酬なみ、と言われていましたので、料金も高額でした。
さすがに高すぎる、ということで安い料金でサービス提供する審査機関が出てくるのは、競争原理から考えれば当たり前のことです。
しかし今は完全にそれが行き過ぎになってしまいました。
審査員のお手当もどんどん減っていき、現状では、このお手当ではとても家族を養っていくことはできない、というレベルにまで下がってしまいました。
だからこそ1日あたりの審査料金が10万円を切る値段で提供できるようになっています。
そこからあなたにも考えていただきたいのです。
もちろん時給1,000円レベルの最低賃金の水準よりはまだ高いお手当がISO審査員には支払われていますが、それでも、高度専門職というステータスに見合うほどのお手当が出ない、ということであれば、やる気に溢れた有能な人材が審査員として活動するでしょうか。
おわかりかと思います。
安い審査機関には、やはり能力的には高いとは言いにくい審査員が集まる可能性が高いということになるのです。
審査も人間が行うサービス業の一種です。
つまり、審査員によって、審査の付加価値はやはり変わってきます。
安いところにはそれなりの理由がある、ということです。
しかしもう一弾、掘り下げて申し上げましょう。
審査機関によって、審査員の質の違いはあると業界内では言われていますが、一方で、その審査機関内でも審査員の力量差があるとも言われています。
つまり、料金の高い審査機関であっても、ハイレベルといえない力量の審査員もいれば、料金の安い審査機関であっても、高い力量を持つ審査員のいる、ということもまた事実です。
矛盾したことをお伝えしているようで恐縮ですが、現実は一筋縄ではいきません。
ここが審査機関を選ぶ上での難しい部分になってしまいます。
では結局どうしたら良いの?
ということになりますよね。
最終的には、審査及び認証を取得することで得たい価値は何か、という組織の経営判断が、どの審査機関を選ぶか、ということに繋がります。
だいぶ長くなりましたので、もう1回この話題は次回に続けさせていただきます。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
(了)