ISO内部監査員の養成をどのように行うのがよいか。準備段階における考え方(流れ/プロセス)について、12項目に分けてお伝えしています。いよいよ12項目も終了が近づきました。
12項目については下記の通りです。
1.自社の内部監査に関連する規程の理解(復習)
2.直近数年間のマネジメントレビューにおけるトップの指示等の状況把握
3.自社の内部監査の過去の実施状況の把握
4.自社の内部監査員の状況(所属部門、年齢、業務経験、監査経験)理解
5.外部審査(第三者ISO審査)における指摘等の内容把握
6.過去の内部監査員教育実施記録の確認
7.過去の内部監査員教育に使われたカリキュラムの確認
8.過去の内部監査員教育に使われた教材の確認
9.過去の内部監査員教育における受講者評価記録の確認
10.継続教育の有無の確認及びその内容の確認
11.経営者の内部監査への受け止め方の把握
12.経営者がこの先、内部監査に期待することの理解
今日は、一気に11項め、12項めの説明をしていきたいと思います。
11.経営者の内部監査への受け止め方の把握
12.経営者がこの先、内部監査に期待することの理解
改めて基本に立ち返ってみましょう。
内部監査を行う目的は何でしたでしょうか。
そうですね、自社の経営状態の確認、そして改善の芽を探す、ということです。
そしてそれは誰の要請かといえば、広く捉えれば、全社員の要請、ということになりますが、狭く捉えれば、経営者からの要請、ということになるわけです。
理想を言えば、内部監査を行わなくても、日常の状況確認を経営者が自らの目で、手で足で行うことができていれば素晴らしいことです。
そしてそれができれば何よりのことです。
ですが現実的には経営者も生身の人間ですので、時間に限りがあります。物理的にも分身を作るわけには行きませんから、会社の規模がある程度以上になれば、経営者でカバーできるものにはすぐに限界が来てしまいます。
だからこそ、内部的に認めた、力量あり、と判定している内部監査員に監査業務をお願いするわけですね。
経営者に成り代わって、監査を行ってほしい、ということなのです。
そうすると、内部監査が終わればその報告は誰に対して行うか、といえば、当然経営者に対して、ということになります。
もちろん内部監査報告書は監査チームリーダーが責任を持って取りまとめるのが通例ですから、一監査員、あるいはISO事務局の方が登場する機会は多くないかもしれません。
ですが、関係する人々が全員、報告書は誰のためにどのような視点で作り上げるものか、ということを理解していれば、必然的に良い報告書が出来上がっていく、ということは多くの方が容易に想像していただけると思います。
内部監査報告書を取りまとめることは決して簡単にはできません。時間も労力も要します。ですが、丹精込めて作った報告書は、必ず経営者が自社の経営を考える上での多くの示唆を与えることになります。
決められた型通りの報告書を出せばよいのだ、というスタンスから、経営改善を進める上での基礎資料なのだ、という気概を持って、報告書作成に勤しんでいただきたいと私は願っております。
さて、ではその報告書が無事できあがり、経営者に提出した跡についての説明に進めていきましょう。
内部監査報告書の書式は各社各様です。このような書式にしなければならない、というものはありませんが、ぜひあなたの会社の報告書の1枚目(表紙あるいは鑑)のスタイルを改めて見ていただきたいのです。
そこに今回実施した監査の結果についての概要を記す欄がおそらくあると思いますが、その下には、経営者が今回の監査の結果をどのように受け止めたか、あるいは評価したかを記入する欄はありますか。
もし欄がなければぜひその帳票は改訂してほしいと願います。
本来であれば、それは経営者が指示すべきものなのですが、存在しない場合は、経営者もそのような指示を出してきていなかった、ということになりますので、致し方ありません。
事務局サイドで欄を追加して、経営者に毎回必ずコメントを書いてもらうようにしてください。
この欄が持つ意味合いはなにかといえば、監査員と経営者のキャッチボールをする箇所なのです。
監査員の方々の労をねぎらうとともに、監査結果を経営者としてどのように受け止めたかを、この先の記録として残る大事な経営者の言葉として、組織経営に活用して言っていただきたいわけです。
書物の良さは、将来に残る、という点です。
口頭での指示は時間の経過とともに忘れ去られる、あるいはそこまで行かなくても切迫感がなくなっていくのはやむを得ません。
それが文章としてきちんと残ると、次回の監査の際にもあるいは、数年後であってもその時の経営者のコメントは意義を持ち続けます。
監査員あるいはISO事務局の立場からすれば、経営者にきちんとコメントを書いてもらう、というところは大事な責務であるとともに、経営者が書いたコメントしっかり受け止め、必要な対処を取ることも大事なお役目です。
それによって、監査員側の人々が感じている自社に対する問題意識、課題意識と、経営者が感じている問題・課題意識とのギャップがわかります。
それを今後の内部監査、そして日頃の業務に役立てていくことがとても大事なことなのです。
そしてそのことがもう一つの項目「経営者がこの先、内部監査に期待することの理解」にも繋がっていきます。
内部監査には終了、というものがありますが、経営には終了はありえません。連綿と続いていく経営においては、内部監査の結果を踏まえた次の手があります。
そしてそれは様々な経営管理の次の手に繋がっていきますが、その一つとして、次回の内部監査をどのように行っていってもらうか、ということを経営者は監査が実施されている状態の時から考えるものです。
今回はこのような感じで進んでいるなら、次回はこうしよう。
今回はこのような結果になりそうだから、次回はこうしよう。
ということが、監査の現場に触れることでアイデアとして色々出てくるものです。
その中から最終的に経営者は自ら取捨選択して、次回への指示を出していきます。
その指示をどのように受け止めるか。
完璧に受け止めることはそう簡単ではないでしょう。
ですが、100%受け止める気持ちで経営者と向き合う社員、内部監査員の人が一人でも多くいる会社ことが、成長発展を成し遂げていくものです。
これは言うは易しの世界で、私自身の実体験の中でも、早々簡単にはことは進みませんでした。ですが、それで諦めてしまっては元も子もありません。
常に足りない、満足できないのは致し方ない中で、どれだけ歩みを進められるかが何よりも大事なのです。
まずは、今日お伝えしている2つの項目(問題意識)を念頭に置いていただき、そして内部監査に携わることができれば、大きな一歩です。
あなたの活躍を期待しています。
今回は、ここまでとしても良いつもりでここまで書き進めてきましたが、一応いつも同様AI先生のお知恵も借りてみることにしましょう。
ただし、今回はどのようなアウトプットを期待するか、そのための質問はどのように投げかければよいか。
あまりに一般的な聞き方では良い回答は引き出せませんし、一方で、限定しすぎてしまうと趣旨からそれてしまうように感じ、少々悩みました。
そして、質問を入れ込んだ結果、ちょっとびっくりの回答が出てきました。
この程度の回答しかやはり現状のAI先生では無理だったでしょうか、というコメントで最後を締めようかと思っていたのですが、それはあまりにも不遜というものでした。
大変素晴らしい回答をいただきましたので、改めてChatGPTの力を思い知られました。
以下に転載しますので、どうぞご確認ください。
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Q:ISO内部監査について下記の2つのポイントを踏まえて、教えてください。
経営者の内部監査への受け止め方の把握、
経営者がこの先、内部監査に期待することの理解、
これらを内部監査員としては、どのように進めていけばよいか、そしてどのように業務に活かしていけばよいでしょうか。
A:経営者の内部監査への受け止め方の把握と経営者の期待の理解は、内部監査員が効果的な監査活動を行う上で非常に重要な要素です。以下に、これらのポイントを踏まえて進めるべきアプローチと業務への活かし方を説明します。
1.経営者の内部監査への受け止め方の把握:
●コミュニケーション: 経営者との積極的なコミュニケーションを図り、内部監査の目的や重要性を説明します。経営者が内部監査をどのように受け止めているかを理解するために、対話や意見交換を行います。
●目標の共有: 経営者とのミーティングや会議を通じて、経営者が期待する内部監査の役割や目標を共有し、一致することを確認します。
●経営者のニーズの把握: 経営者が内部監査にどのような価値や成果を期待しているかを理解するために、経営者とのコミュニケーションや要件定義を行います。
2.経営者の期待の理解:
●要件の明確化: 経営者の期待を明確化するために、経営者との間で目標や優先事項、課題を共有し、内部監査の方向性を確認します。
●監査プランの策定: 経営者の期待に合わせた監査プランを作成し、内部監査の活動や目標達成に資する要素を盛り込みます。
●成果の報告: 内部監査の成果や課題の報告書を作成し、経営者が求める形式や内容に合わせて提出します。報告書は具体的な改善策やリスク管理に役立つ情報を提供する必要があります。
これらのポイントを踏まえると、内部監査員は次のように進めていけます:
1.経営者の内部監査への受け止め方の把握:
・経営者との対話を通じて、経営者が内部監査をどのように受け止めているかを理解します。
・経営者に内部監査の重要性や付加価値について説明し、協力と支援を得るための信頼関係を築きます。
2.経営者の期待の理解:
・経営者とのコミュニケーションを通じて、経営者が内部監査にどのような成果や効果を期待しているかを明確にします。
・経営者の要件や優先事項に基づいて監査プランを策定し、内部監査の活動を重点的に進めます。
内部監査員が経営者の内部監査への受け止め方や期待を把握し、業務に活かすためには以下のアプローチを考慮できます:
■監査プランの策定: 経営者の期待に基づいて監査プランを作成し、経営者が重視するリスク領域や業務プロセスに焦点を当てます。
■コミュニケーション: 経営者との定期的な報告や会議を通じて、内部監査の進捗状況や成果を共有し、経営者のフィードバックを収集します。
提案と改善: 内部監査の結果や報告書を活用し、経営者に具体的な改善策やリスク管理の提案を行います。
■ビジネスインパクトの追跡: 内部監査の活動や提案が業務に与えた影響や改善の実施状況を追跡し、経営者に報告します。
これらのアプローチによって、内部監査員は経営者の期待に応えながら、内部監査の効果を最大化し、PDCAサイクルを回すことに貢献することができます。
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いかがでしょうか。
この回答には、恐れ入りました、という感じです。
非常に平易にかつ網羅的にポイントを押さえた回答をしてくれました。
この回答は十分にすべての方に咀嚼していただきたい、という思いです。
さて、随分と長い連載となりました。
ここまでの12回でISO内部監査員の教育をどのように考え、実施していけばよいかの考え方そして手法の入り口の部分をご説明してまいりました。
何か少しでもお役に立つ部分があれば幸いです。
一度でご理解いただくのは少々困難かもしれません。
お時間をいただくことになりますが、どうぞ2回、3回と読み直してみて、自社の内部監査員教育を考える、あるいは改めて向き合ってみることをしていただければ筆者としても望外の喜びです。
次回からは、ISO内部監査員教育の実践についてのご説明にテーマを進めていきたいと考えています。
引き続きお読みいただければ幸いです。
本日もありがとうございました。
(了)