ISO内部監査員の養成をどのように行うのがよいか。準備段階における考え方(流れ/プロセス)について、12項目に分けてお伝えしています。

 

今日はその5回目です。12項目については再掲します。

 

1.自社の内部監査に関連する規程の理解(復習)

2.直近数年間のマネジメントレビューにおけるトップの指示等の状況把握

3.自社の内部監査の過去の実施状況の把握

4.自社の内部監査員の状況(所属部門、年齢、業務経験、監査経験)理解

5.外部審査(第三者ISO審査)における指摘等の内容把握

6.過去の内部監査員教育実施記録の確認

7.過去の内部監査員教育に使われたカリキュラムの確認

8.過去の内部監査員教育に使われた教材の確認

9.過去の内部監査員教育における受講者評価記録の確認

10.継続教育の有無の確認及びその内容の確認

11.経営者の内部監査への受け止め方の把握

12.経営者がこの先、内部監査に期待することの理解

 

 

5.外部審査(第三者ISO審査)における指摘等の内容把握

 

今回は、今までのご説明内容とは少し毛色が変わります。

今まで数回は、組織内で行われたことに関する資料類(報告書類)の確認の大事さについてお伝えしてきたわけですが、今回は外部の目についてのお話となります。

 

さあ、それでは今日も始めていきましょう。

 

皆さんの会社では、ISOの審査を受けて、認証を取得していると思います。ISO 9001だったりISO 14001の登録証が社内のどこかに掲示されていると思います。

 

 

認証の価値については色々な視点があり、そちらを論じるとまた長くなってしまいますし、本日のテーマからも外れてしまいますので、簡単に触れるだけに留めさせていただきますが、

 

 

外部審査を受けることによって、ご所属の組織がしっかりとして運営管理を行っている、問うことがISOという国際基準に則って認められた、ということはまず意識しておいてください。

 

あくまで国内での運用というのが正直なところで、審査機関から発行される登録証も日本語のみというケースがほとんどではありますが、そうは言っても国際規格、そしてその運営ルールは国際的に整合が取れた形での運用となっていますので、海外にもし出た場合、おたくの会社はISOの認証をとっているのか、それはすごいな、と言われる可能性は大いにある、ということなのです。

 

 

つまり、ISOのプロが皆さんの会社に出向いてきて、国際基準に基づいて決められた工数(日数)の審査を行って、お墨付きを与えたということが、認証が付与された、ということになりますので、その点は自信を持っていただきたいわけです。

 

 

さて、その上で本日のテーマに入っていきます。

 

いつも通り、AI先生に質問してみましょう。

 

 

========================================

Q:ISO内部監査員教育の内容を検討する上で、第三者審査(外部審査)の実施状況、報告書の内容をチェックすることは大事と考えていますが、その際のポイントについて教えてください。

 

A:第三者審査(外部審査)の実施状況や報告書の内容をチェックすることは、ISO内部監査員教育の検討において重要な要素です。以下にポイントを示します。

 

審査の範囲と項目: 外部審査の報告書をチェックする際には、審査の範囲と対象となった項目を確認します。報告書が適切な範囲で実施されているか、必要なプロセスや要件が網羅されているかを確認します。

 

不適合事項と是正措置: 報告書に記載された不適合事項や提案された是正措置に注目します。不適合事項が適切に特定され、それに対する是正措置が適切に提案されているかを確認します。また、是正措置の実施状況や効果の評価が行われているかもチェックします。

 

持続的な改善: 報告書には組織の持続的な改善への提案や改善の効果の評価も含まれています。これらの項目が報告書に適切に記載されているか、改善活動の進捗や結果が追跡されているかを確認します。

 

審査員の資格と経験: 外部審査報告書のチェックにおいては、審査員の資格と経験にも注目します。報告書には審査員の情報が記載されている場合がありますので、その情報を確認し、審査員の信頼性や専門知識のレベルを評価します。

 

これらのポイントを考慮して、外部審査の実施状況や報告書の内容をチェックすることで、内部監査員教育の改善点や教育項目を特定することができます。また、外部審査の結果や報告書を通じて、組織のマネジメントシステムの適合性や改善の方向性を把握することもできます。

 

 

Q:回答ありがとうございます。しかしながら回答を読んでいると、審査機関の事務局側が当該審査の適切性を判定するためのポイントのように感じてしまいます。

審査側ではなく、審査を受ける側として、どのように受け止めればよいのか、という視点が大事ではないかと思うのですがいかがでしょうか。

 

A:おっしゃる通り、私の前回の回答は主に審査機関側の視点からのアドバイスでした。申し訳ありません。

 

審査を受ける側として、外部審査の実施状況や報告書をチェックする際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

 

1.認識と受け止め方: 外部審査の報告書を受け取った際に、それをポジティブな視点で受け止めることが重要です。報告書は組織のマネジメントシステムの改善に役立つ情報を提供してくれるものです。審査の目的は適合性の確認や改善のためのアドバイスを得ることですので、審査結果や報告書を受け入れる姿勢を持つことが重要です。

 

2.不適合事項への対処: 外部審査報告書に記載された不適合事項に対しては、適切な対処を行うことが求められます。不適合事項を受け入れ、原因を分析し、是正措置を策定し実施することで、組織のマネジメントシステムの改善が進むことになります。不適合事項への対処には迅速かつ効果的な対策を講じることが重要です。

 

3.改善の機会と情報源: 外部審査報告書は、組織のマネジメントシステムの改善のための貴重な情報源です。報告書には審査結果や改善提案が含まれており、これを活用することで組織のマネジメントシステムをさらに向上させることができます。報告書の情報を受けて、改善活動の計画立案や実施に活かすことが重要です。

 

以上のポイントを考慮しながら、外部審査の実施状況や報告書を受け止めることが大事です。組織としては、審査の結果を受けて改善活動に積極的に取り組む姿勢を持ち、組織のマネジメントシステムの継続的な改善を進めることが重要です。

========================================

 

 

 

さあ、この回答をどう受け止めましょうか。

まず、最初の回答は、残念ながらピントが合っているとは到底言えないものでした。

 

書かれている内容自体は間違っているというものではないのですが、見る視点がずれてしまっているです。

 

ですから、これは質問の仕方が悪いな、と反省して、再度質問を入れました。

2つ目の「Q:」のところも確認いただければ幸いです。

 

その結果が上記のような回答となりました。

 

しかしこの回答を得るのに再作成を数度。何度も視点が違う、審査機関側のチェックポイントだと自ら認識しているにもかかわらず、AI先生の回答はその視点から抜け出せなかったのですが、ようやく上記のものにたどり着き、期待する回答レベルに達した、という状況です。

 

 

AI先生に頼るのはここまでとして、この項目を挙げた意図、そして私なりの考え方をここからご説明したいと思います。

 

 

 

第三者審査(外部審査)の状況を確認する第一の狙いは、自社のマネジメントシステム運用のレベルがどの程度のものか、ということの把握のためです。

 

もちろんその外部審査の報告書を見ずとも、認証を取得して何年たっているのか、ということは自社内の情報だけでわかります。

ただし、最近は認証を初めて受けてからずっと同じ審査機関から審査を受けている、という組織ばかりではなくなってきていますので、その審査機関といつからお付き合いしているのか、という確認だけでなく、それ以前にお付き合いしていた審査機関があったのかどうか、も念のため確認しておいた方がよいでしょう。

 

さて、その上で、審査報告書の内容チェックのポイントは、不適合指摘、観察事項(推奨事項)がどれくらい挙がっているか、ということが第一のポイントになります。

 

認証が停止になってしまうような重大な問題はまず起きないのが実情ですから、その有無の確認というよりかは、審査でOKはもらっているけれど、全く問題なしのOKなのか、少し気になる部分あるがこの程度であれば認証の維持、という面では問題ないのか、という全体観の把握ということになります。

 

 

そしてそこから自社ではどのような部分はうまく運用がなされているのか。そしてどのような部分にまだ弱点があるのか、ということを把握していくことができれば素晴らしいのです。

 

更にその中で、内部監査、あるいは内部監査員の力量や内部監査員の教育訓練についてのコメントがあるかどうかもチェックしておきたいポイントです。

 

ただ単に指摘やコメントの数が多い少ないの問題ではなく、報告書の内容として、自社のマネジメントシステムの運用管理のレベルをどのように評価してくれているのか、そしてさらに伸び代としてどこにどのようなことがあるのか、ということをつかみたいわけです。

 

 

 

ただしここは契約している審査機関によって、正直なところ、審査報告書の内容がまちまちなのが実態です。

詳細の記述がある場合もあれば、簡単な資料に留まっている場合もあるので、まずは自社にある、外部審査の報告書をとにかく見る、ということから始めてください。

 

本来であれば、その内容はマネジメントレビューの大事なインプット項目になっているはずなので、しっかり取り組まれている組織であれば、わざわざ改めて外部審査の報告書をチェックしなくても、ともいえるのですが、実態としてはそこまでの咀嚼をせずにマネジメントレビューへのインプットとしているケースが多いはずですので、この段階で、改めて審査報告書の内容確認をしておいて欲しいのです。

 

 

 

そしてもう一つ、これはその報告書を見るだけではわからないので追加対応が必要なことになりますが、その外部審査での指摘や改善提案について、その後の社内での取り扱い、対処状況についての調査確認があります。

 

不適合指摘の場合は、審査機関とのやり取りがあるので途中で止まってしまっている、ということは有り得ませんが、観察事項(改善指摘)の場合は、組織に対応が任されるケースがほとんどですので、下手をすると、言われたまま何も社内ではアクションをとっていない、ということも起きうるのです。

 

これは単に内部監査員教育をどのようにかすればよい、という問題ではなく、全社でISOを有効活用する上でのきっかけになる部分ですので軽視してもらっては本当は困るのですが、実際問題、そこまで手が回らず、着手できていない、ということも十分に考えられます。

 

 

その組織の実態を踏まえたうえで、内部監査員への教育プログラムを考えていくことが大事なことと一つになってきます。

 

ここまでご理解いただければ、また一歩前進です。

今日もお読みいただきありがとうございました。お疲れさまでした。

 

(了)