前回は、ISO内部監査員教育を行う際に、どのようなプロセスを取ればよいかを考え始めました。
いつも通りAI先生に教えてもらおうと思って問いかけたのですが、おねだりをするような形で、もう1回、もう1回、と再生成をリクエストすると、どんどん違う観点での答えが返ってきました。
どれも有用な回答ばかり、というAI先生の実力を思い知らされることにはなりましたが、逆に情報量が多くなりすぎると、そこまではわかったけど、では自分はどうしたらよいの、という新たな壁が出現してしまった、にっちもさっちもいかない、ということになってしまうのではないだろうか、という懸念を持つに至りました。
AI先生にばかり頼っていても仕方ありませんので、私の考える回答をお示しします、と述べて前回終わりましたので、今回は、
新任のISO事務局の方が、内部監査員教育を自社内で展開していく必要が生じたときに、どのような考え方に基づいて、この課題に取り組んでいけばよいか、という観点で記していきます。
まず、前回、AI先生にぶつけた質問を書いた架空の人物の設定は、
ISO9001の認証を取得して10年が経つ金属加工メーカー。
従業員規模500名程度。
ただし、社員の年齢構成はベテラン、高齢者が多く、当初ISO認証取得する際に50名程度の内部監査員を養成したが、多くはそのベテラン社員で、今後5年以内にそれらの方々は定年退職を迎える、という状況にある。
現在は内部監査行う上でも問題は特にはないが、5年後は何もしないと監査できるスタッフがいなくなってしまうので、2年程度かけて、内部監査員教育を行って新任者を育て、そしてその後3年程度かけて、それらの新任者が現場で監査経験をベテラン監査員に付く形で積んでいくことを想定。
現状のISO事務局長は、超ベテランの方で、内部監査対応も、外部審査を受ける際の対応もオールマイティにこなすことができ、経営層からの信頼も厚い人だが、その人もあと2年で定年退職になる。
教育に関しては、その超ベテラン事務局の方は、外部研修を受けに行き、ISO審査員補の資格まで取得しているが、その他の内部監査員は、初めて認証を受ける際に、中心メンバーは外部の研修機関で内部監査員研修を受講しているが、その他の監査員は、その超ベテラン事務局の人が講師になって行ったため、外部研修には参加していない。
自分は今まで工場の現場で、日々製造の業務に携わり、職長を務めていたが、将来工場長を目指すなら、品質管理、品質保証全般への理解を踏まえておく必要があると感じで、ISO事務局への異動を希望して、今回の配属となった。
年齢は40代前半。
ISOについては、全社の教育で基礎的な部分の理解はしているつもりだが、あとは自分の業務に関連する部分の規程を見ていたくらい。
内部監査を受けたことは数回あるが、第三者審査の外部審査は今まで上位職の人が対応してきたので、実際に受け答えをしたことはない。
自社の品質マニュアル全体も、通読はしたことはあるが、自業務に関係のないところはほとんど印象に残っていない。
こんな感じです。
読者の方の状況と合致するとは思いませんが、近しい部分、だいぶ違う部分、そういったところを踏まえながら、このISO事務局の方に向けた回答を、ご自分のケースに当てはめて考えてみていただければ幸いです。
■新任ISO事務局に期待される内部監査員養成のための動きかた■
1. 自社の内部監査に関連する規程の理解(復習)
2. 直近数年間のマネジメントレビューにおけるトップの指示等の状況把握
3. 自社の内部監査の過去の実施状況の把握
4. 自社の内部監査員の状況(所属部門、年齢、業務経験、監査経験)理解
5. 外部審査(第三者ISO審査)における指摘等の内容把握
6. 過去の内部監査員教育実施記録の確認
7. 過去の内部監査員教育に使われたカリキュラムの確認
8. 過去の内部監査員教育に使われた教材の確認
9. 過去の内部監査員教育における受講者評価記録の確認
10. 継続教育の有無の確認及びその内容の確認
11. 経営者の内部監査への受け止め方の把握
12. 経営者がこの先、内部監査に期待することの理解
このように見ていくと、ずいぶん多くの項目があるな、と感じられるかもしれませんが、少々細かいメッシュで切り出しているもの、ということでご理解ください。
さあ、では一つずつ見ていきましょうか。
1.自社の内部監査に関連する規程の理解(あるいは復習)
最初に取り組む必要が有ることは、まず自分の足元を固める、ということです。
ISOマネジメントシステム運用の基本にも通じる部分ですが、基準をしっかり確認し、理解することがはじめの一歩です。
基準が存在せずにそこから作っていかなければならない、という段階ですとそれは相当に大変なことになりますが、この会社そして多くの読者の方の状況では、すでに会社運営の基準は出来上がっている、そしてISO運用の実績があれば、ISOに関連する各種社内基準も整備されているはずですので、まずその概況をしっかりつかむことです。
ここで着目してほしい単語は、「概況」です。
「詳細」ではありません。
木を見て森を見ず、になってほしくはありませんので、詳細の把握は甘くても、概況(概要)はしっかり捕まえておいてほしいのです。
その筆頭の内部規程は、内部監査に関する規程、多くの会社では内部監査規程としていると思いますが、その内容については、さすがに理解できていないとこの先のお仕事は進みませんから、この規程の内容だけは、暗記することまではさすがに必要ありませんが、そのくらいのつもりで読み込んでください。
そしてもう一つはそれに関連しますが、品質マニュアルです。
名称は組織によっては、マネジメントシステムマニュアル、と言っていたり、業務マニュアルと言っているかと思いますが、マネジメントシステムを運用していく上での1次文書の位置づけのものです。
内部監査規程はその下に位置づける重要な2次文書、ということになります。
この2つの文書を確認すると、
・内部監査を行う対象部門、部署
・内部監査を行う時期
・内部監査を行う手順(準備段階、実施段階、フォローアップ段階それぞれの)
・内部監査を行う上での基準(文書)について
・内部監査員の教育訓練及び任命について
・内部監査の報告について
・内部監査自体の改善(PDCA)について
ということが明らかになります。
まずこの枠組を理解することが、実際の状況を理解していく上での基礎知識、ということになります。
自社のルールですから、もし理解不十分な所があれば、確実に潰しておきましょう。あとあとでは聞きたくても、そんな事も知らないのか、と言われるのが恥ずかしくて、聞けなくなってしまいますから、最初が肝心です。
もし、もうそんな時期じゃなくなってしまった、という方は、聞かぬは一生の恥、と思って、とにかく早い段階での疑問解消を図っておきましょう。
繰り返しますが、暗記の必要はありません。
この事の詳細は、あそこに書いてあったな。詳細確認の必要が生じた際にはあの文書のこの辺りにたしか書いてあったな、ということが自分の中で整理、認識できるようになることが大事です。
さて、本項の私からの説明は一旦、このくらいとさせていただき、いつも通り、AI先生に投げかけてみましょう。
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Q:ISOマネジメントシステムの認証を取得しています。
自社の内部監査に関連する規程を理解する上でのポイントを教えてください。
A:ISOマネジメントシステムの認証を取得している場合、内部監査に関連する規程を理解することが重要です。以下に、内部監査に関連する規程のポイントをいくつか挙げてみます。
① 内部監査計画の策定
内部監査を実施するにあたり、事前に内部監査計画を策定する必要があります。内部監査計画は、内部監査の目的や範囲、スケジュール、監査対象部署、監査チェックリストなどを明確にした文書です。内部監査計画を作成することで、内部監査の進行管理や成果の評価が容易になります。
② 内部監査員の資格と教育
内部監査員は、内部監査を適切に実施するために、内部監査の手法や基準を理解し、監査技術を習得している必要があります。内部監査員の資格や教育に関する規程がある場合は、これに従うことが求められます。
③ 監査記録の作成
内部監査を実施した場合、その結果を適切に記録する必要があります。監査記録は、監査の成果や課題を詳細にまとめた文書で、監査対象部署やマネジメントレビューなどでの利用が想定されます。
④ 監査結果の報告と改善策の立案
内部監査の結果は、適切な報告書として提出する必要があります。報告書には、監査の目的、範囲、結果、課題、改善策などが明確に記載されることが求められます。また、報告書を元に改善策を立案し、実施することで、内部監査の成果を生かすことができます。
⑤ 内部監査の継続的改善
内部監査は、継続的に実施することで、マネジメントシステムの改善につながります。内部監査の実施状況や結果、改善策などを定期的にレビューし、内部監査の継
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また途中で回答が止まってしまいました。
最後は、継続的改善は内部監査プロセスにおいても必要ですよ、ということをきっと伝えたかったのだと思います。
文意はだいたい把握できるので良しとしましょう。
しかしながら、回答の内容自体は不適切なものはありませんが、質問の意図をくんでくれたとは言い難い回答でした。
質問の仕方が悪かったかな、と思って、もう少し言葉を補って再質問してみました。
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Q:ISOマネジメントシステムの認証を取得しています。
自社の内部監査に関連する規程(マニュアルや内部監査規程)への理解を深める上でのポイントを教えてください。
A:ISOマネジメントシステムの認証を取得している企業において、内部監査規程は非常に重要な文書の一つです。以下は、自社の内部監査規程に関連する理解を深める上でのポイントです。
① 内部監査の目的とスコープを明確にすること
内部監査は、マネジメントシステムの評価や改善を目的とした活動です。内部監査規程では、内部監査の目的、スコープ、および内部監査活動のプロセスに関する情報を明確に定義する必要があります。また、内部監査によって評価する範囲も明確に定義することが必要です。
② 監査人の役割と責任を明確にすること
内部監査規程は、監査人の役割と責任についても明確に定義する必要があります。監査人は、内部監査の目的やスコープに従って、評価活動を遂行することが求められます。また、監査人は、内部監査の実施方法や評価基準に関するガイドラインを理解することが必要です。
③ 監査計画の策定と実施に関する情報を明確にすること
内部監査規程では、監査計画の策定と実施に関する情報も含まれています。監査計画は、内部監査の目的やスコープに従って、評価活動を遂行するための計画です。監査計画には、評価対象、監査方法、評価期間、および監査人の役割と責任に関する情報が含まれます。
④ 評価結果の報告とフォローアップに関する情報を明確にすること
内部監査規程には、評価結果の報告とフォローアップに関する情報も含まれています。監査結果は、監査報告書として文書化され、関係者に提出されます。報告書には、評価結果、発見された問題、および改善提言が含まれます。また、監査結果に基づくフォローアップ活動も含まれます。
内部監査活動の改
Q:途中で回答がストップしていますが、この続きは?
A:失礼いたしました。続きを回答いたします。
内部監査規程には、以下のようなポイントが含まれます。
① 監査の範囲や頻度について
内部監査の範囲や頻度について、具体的に規程に記載されています。例えば、どのようなプロセスや部門を対象にするのか、またどの程度の頻度で監査を実施するのかが示されている場合があります。この規程を参照することで、内部監査のスケジュールを立てる際の指針となります。
② 監査人の任命や役割について
内部監査人の任命や役割について、規程に記載されています。例えば、内部監査人の選定基準や、内部監査を行うためのトレーニングプログラムについて記載されている場合があります。また、内部監査の実施において、監査人がどのような役割を担うのか、例えばリード監査人やチームメンバーとしての役割分担についても規程に記載されていることがあります。
③ 監査手順や報告書の作成について
内部監査の手順や、報告書の作成に関する規定が含まれている場合があります。例えば、監査の準備や実施手順、または報告書の書式や記入方法などが記載されていることがあります。これらのポイントに沿って内部監査を実施することで、監査の一貫性や報告書の品質を確保することができます。
④ 監査結果の扱いについて
内部監査の結果をどのように扱うか、例えば監査報告書の承認プロセスや、報告書に記載された課題の処理方法などについて、内部監査規程に記載されていることがあります。この規程を参照することで、監査の結果に基づく改善活動や、次回監査に向けた準備を進めることができます。
以上が、ISOマネジメントシステムに関連する内部監
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どうしても文章が途中で止まってしまいます。
これは現状のChatGPTの弱点なのでしょう。早期の解消を期待します。
さあ、この回答をどのようにお感じになりますか。
しっかりとした文章であり、回答であることは間違いありません。
ですが、やはり聞きたいことへの回答にはなかなか踏み込んでいってくれません。
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Q:内部監査規程についてはわかりましたが、マニュアルについての言及がないようです。
マニュアルは内部監査規程の上位文書なのですが。
A:申し訳ありません、先程の回答に漏れがありました。マニュアルは、内部監査規程の上位文書であることは確かです。以下に、マニュアルに関連するポイントをいくつか挙げてみます。
① マニュアルは、マネジメントシステム全体の方針、目的、運用手順などを定めた上位文書です。内部監査に関する方針や目的、内部監査の実施手順、内部監査員の役割や資格要件など、内部監査に関する内容も含まれることが一般的です。
② マニュアルは、認証取得時の審査において重要な文書です。審査官は、マニュアルの内容を確認し、実際の運用との整合性を評価します。そのため、マニュアルの内容は、実際の運用と整合性が取れていることが求められます。
③ マニュアルは、定期的な見直しと改訂が必要です。マネジメントシステムや内部監査に関する規制や要件が変化した場合や、内部監査の運用上の問題が発生した場合には、マニュアルの改訂が必要です。また、改訂後は、全ての関係者に周知し、適切に運用する必要があります。
以上のように、マニュアルも内部監査に関連する重要な文書であり、適切な運用が求められます。
Q:マニュアルそのものについては理解できましたが、マニュアルと内部監査規程の関連を含めて理解する上でのポイントを教えてもらえませんか?
A:マニュアルと内部監査規程は、ISOマネジメントシステムの内部監査において重要な役割を果たしています。以下はその関連性についてのポイントです。
① マニュアルは、組織のマネジメントシステムを構築する上での基本的な方針や手順を示した文書です。内部監査規程は、内部監査の実施におけるルールや手順を示す文書です。内部監査規程はマニュアルの内容を具体化し、内部監査の実施に必要な細かな手順を示しています。
② マニュアルと内部監査規程は、内部監査における評価基準を確立するために役立ちます。マニュアルが示す基本的な方針や手順を踏まえ、内部監査規程が示す手順に基づいて内部監査を実施することで、組織のマネジメントシステムがISO要件に適合しているかどうかを評価することができます。
③ 内部監査規程は、内部監査の実施における責任と権限を明確化することで、内部監査の信頼性を確保します。マニュアルが示すマネジメントシステムの基本的な方針や手順を踏まえながら、内部監査規程が示す手順に基づいて内部監査を実施することで、内部監査員が正確かつ適切に内部監査を実施することができます。
④ 最後に、マニュアルと内部監査規程は絶えず改善される必要があります。内部監査の実施において得られた知見や課題をマニュアルや内部監査規程に反映することで、マネジメントシステムの改善を継続的に推進することができます。
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いかがでしょうか。
この回答、言葉遣いで多少手直しが必要な部分はありましたが、しっかりした内容の文章になっています。
そしてマニュアルと内部監査規程の違いについても理解が深まるのではないかと思います。
1次文書と2次文書という位置づけの違いを確実に理解した上で、これらの回答と併せて、自社の文書をチェックしていただくと、理解が確実に深まると思います。
一度で理解できなければ時間をおいて2度目のチェックにトライしてみてくださいね。
それでは今日はここまでとさせていただきます。
(了)