前回まで、ISO審査員の話をずっと続けてきました。

一区切りとなりましたので、今回から内部監査、内部監査員に関する話題に入っていきます。

 

 

ISOの認証を取得するためには、内部監査は避けて通れません。

 

なぜならば。

 

答えは簡単でして、規格要求事項の中に、内部監査の実施を求めているからです。

ただし、そこで問題になるのは、認証を取得しようあるいは、している組織が、内部監査にどのような思いを持っているか、なのです。

 

 

やらなければならないから、仕方なくやる、

という組織も正直あります。

でもそれではあまりにももったいない、というか、経営の本質をはき違えてしまっている、と言っても過言ではありません。

 

もしその程度の運用をしているのであれば、認証取得自体も辞めてしまってよいレベル、ということが想像できてしまいます。

 

経営はいかに貴重な資源を活用して、より大きな成果をあげるか、ということを常に意識しなければならないわけです。そしてこれは経営者だけが持っていればよい感覚ではありませんので、どうぞ内部監査に関わる全ての方が、そこにかけている時間とお金の価値を再認識したうえで、どのレベルのアウトプットが現在出ているのか、つまり付加価値がどれだけついているか、という問題意識と共に内部監査に取り組んでいただきたいのです。

 

 

さて、堅苦しい、偉そうな内容から始めてしまいましたが、内部監査員になるためにはどのようなステップをとっていけばよいのか、いつも同様AI先生に聞いてみました。

 

そこから具体的はお話に入りましょう。

 

 

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Q:ISO内部監査員になるためにはどのようなことが必要なのか教えてください。

 

A:ISO内部監査員になるためには、以下のようなことが必要です。

 

①    ISO規格に関する知識:まず、対象となるISO規格についての知識が必要です。ISO内部監査員は、特定のISO規格に基づいて監査を行うため、その規格に関する知識が必要不可欠です。

 

②    監査技術の習得:監査技術に関する知識やスキルを習得することも必要です。内部監査員は、監査の目的や方法を理解し、適切な技術を使って監査を実施する必要があります。

 

③    実務経験:内部監査員になるには、実務経験が必要です。内部監査員としての経験がない場合は、外部の監査員としての経験や、ISO規格に関する実務経験があることが求められます。

 

④    内部監査員研修の修了:内部監査員研修の修了が必要な場合があります。ISO規格によっては、内部監査員研修の修了が必要とされていることがあります。

 

⑤    監査実施能力の確認:内部監査員になる前に、監査実施能力の確認が必要な場合があります。これは、実際に監査を実施することによって能力を確認することがあります。

 

以上が、ISO内部監査員になるために必要なことです。ただし、国や地域によって異なる場合がありますので、対象となるISO規格や所属する組織の要件に合わせて、具体的な条件を確認する必要があります。

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驚きました。

きわめてまともな返答が返ってきました。

 

この回答であれば、中堅レベル社員のよる文章、と思えば満点です。

AI先生の実力はあなどれません。

 

そして、ここでの最大のポイントは、

4項めの「内部監査員研修の終了」のところです。

 

AI先生の回答は、「研修の終了が『必要な場合があります』」となっています。

 

そうなんです。

必ず必要です、 とはなっていません。

 

これが正解なのです。

 

えっ、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

内部監査を行う上での監査員資格。

 

まず、審査員のような資格制度は存在しません。

そして規格要求事項自体も、内部監査を行う人への力量を求めてはいますが、それは資格ではなく、組織がどうしてその監査員が力量を持っているのか、ということをしっかり説明できればよい、という枠組みになっています。

 

ですので、何もお金をはらって外部の内部監査員研修を受講しなくてもよいのです。

 

そうだったの、と思われた方、ぜひこのポイントはしっかり押さえておきましょう!

 

 

 

ただし、です。

 

現実問題は、そうは言っても、という企業さんが大半なのです。

一部の大手の企業では、内部人材がしっかり力量をつけて、社内研修の講師を務めておられます。

そのような人材がいれば、内部のことですから、教育の道筋とは一番まっとうですし、高い効果も期待できます。

 

しかし、やはりそれは向き、不向きがあるので、誰でも勉強すればそのようになれるか、というと可能性はとても高い、というのが私のスタンスですが、それでもどうしても人前に立って話をするなんて絶対いや、という方もおられること、

 

そして教材自体を自分で作らなければならない、ということも高いハードルとなって、内部人材による教育の展開は困難、という企業もたくさんおられます。

 

 

そのお陰で、テクノファのようなISO専業の教育研修機関が存在することができるわけです。

 

 

さて、AI先生の方ですが、その後もう少し突っ込んだ質問をしてみたのですが、そうすると色々よろしくない部分が出てきました。

 

ご参考までに記しておきますね。

 

 

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Q:なるほど。わかりました。そうすると、ISO内部監査員になるために、特別の資格取得はいらない、と考えてよいのですか?

 

A:ISO内部監査員になるためには、特別な資格取得は必要ありません。

ただし、多くの企業や組織では、内部監査員として働くためには、ISOの内部監査員研修を受講し、合格することが求められます。

また、一部の企業や組織では、内部監査員として働くためには、外部の認定機関が認めた資格を取得することが必要な場合もあります。

具体的には、ISO 9001の場合、IRCA(国際認定登録監査員協会)が認定する内部監査員資格や、JAB(日本認定機構)が認定する内部監査員資格があります。

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ここで完全な誤りが出てきました。

IRCAは内部監査員資格の登録制度がありますが、日本のJABはそのような活動は行っていません。

日本におけるISOの要員認証機関であるJRCAではIRCA同様、審査員だけでなく、内部監査員の登録制度を行っている、というのが正しい情報です。

 

JABはあくまでその上部団体ですからお間違いのないようにお気を付けください。

 

ただし、JRCA等への内部監査員としての資格登録者数は、ISO審査員に比べれば大変少ないのが実情です。

 

その理由は上述の通り、資格取得が得に求められているわけではないからで、当然の結果と言えば当然のものです。

 

そして現状のAI先生の弱点のような気がしてきていますが、このような誤りを指摘してただし答えを導き出いと思っても、上手く対応ができないのです。

間違ったURLを回答してくることも度々あるのですが、それを指摘しても、誤ってくるのですが、結局またその誤ったURLを再度提示してくることもしょっちゅう、という有様です。

 

心配になって再度、少し言葉を変えて質問してみました。

 

 

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Q:もう一度お聞きします。ISO内部監査員の資格取得のための道筋はどのようなものになりますか?

 

A:ISO内部監査員の資格取得には、以下のような道筋があります。

 

①    ISO 9001の基礎知識を学ぶ

ISO 9001の概要や要件、内部監査の目的と手順などについて理解を深めるために、ISO 9001の基礎知識を学ぶことが必要です。

 

②    内部監査の技術を学ぶ

内部監査員は、監査対象プロセスの理解や監査手法の習得が必要です。監査手法には、文書のレビューやインタビュー、プロセスの観察、証拠の評価などがあります。

 

③    内部監査実務経験を積む

内部監査員になるためには、実際の内部監査実務経験を積むことが必要です。経験を積むことで、監査手法の習得や実践的な問題解決力の向上が期待できます。

 

④    内部監査員研修を受講する

内部監査員研修を受講することで、内部監査の手法や技術、監査員としてのマインドセットなどを学ぶことができます。また、内部監査員資格取得に必要な知識やスキルを身につけることができます。

 

⑤    内部監査員資格試験を受験する

内部監査員研修を受講した後、内部監査員資格試験を受験します。試験は、内部監査の手法や技術、ISO 9001の要件、監査員としてのマインドセットなどに関する知識や理解度を測定するものです。

 

以上のような道筋を踏んで、ISO内部監査員の資格を取得することができます。

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う~ん、この回答では満足できませんね。

 

まず、順番がこれでは、という状況です。

なぜ4番目に研修受講が出てくるのでしょうか。

2番目の監査技術を学ぶというやり方についてはどのように考えてこの回答を導き出しているのでしょうかね。

このあたりの論理構成は、AI先生の弱点なのか、日本語、という言語のハードルなのか、いずれせよ、というレベルです。

 

そして最後の資格試験の受験に至っては論外です。

 

それまでAI先生とのやり取りは、資格取得は特段不要、という回答をしてきていた、つまり正しく認識していたのに、

残念ながら論理破綻です。

 

もうすこしAIの進化が必要なようです。

 

繰り返しますが、内部監査員になる上で、少なくとも外部資格は不要です。

では何が必要かと言えば、組織内部での認定です。つまりそれは多くのケースは社内資格の付与、ということになります。

 

なんだ、結局資格は必要なのか、と思われる方もおられるでしょうが、組織内部の認定すべきだ、という論理です。

ただし組織内部での資格認定制度は必要、という要求事項はありません。

 

内部監査の都度、力量のある社員を内部監査員に任命する、ということで実務対応上は問題ありませんが、諸々の対応を考えると、資格認定制度を持ち、その任命者の中から監査員を任命する、というやり方が合理的なのです。

 

そして繰り返しになりますが、その内部監査員を組織内で認定、任命する上で、試験が必要だ、という要求事項もありません。

 

そのような運用をしている組織もあるでしょうが、研修受講だけで内部監査員任命をしているとしても、そのこと自体が問題になるわけではありません。

 

要は、どうして内部監査を行ったある人が、内部監査員として力量があるのか、ということをきちんと説明できればそれで全く問題ないのです。

 

今日はここまでにしたいと思います。

次回は、そうは言っても、内部監査員の資格取得をやはりすることが合理的な、と考える際の進め方について説明していきますね。

 

(了)