今回は、審査チームリーダーの審査方針から大きな学びと気づきを得た経験についてお話します。

 

ISO審査は通常、複数の審査員でチームを組んで実施されます。
受審組織の規模が小さければ一人で完結する場合もありますが、社員数が100名を超える企業であれば、2名、あるいは3名体制になることが一般的です。

 

 


リーダーが持つ権限

審査チームにおいては、リーダーの采配がすべてと言っても過言ではありません。

 

メンバーは意見を述べることはできますが、審査が始まればリーダーの指示に従う必要があります。
たとえ主任審査員資格を持つ審査員であっても、メンバーとして参加する場合は同じ立場です。

 

私の場合はまだ主任審査員資格を持っておらず、リーダーから指導を受け評価される立場です。
そのため、基本的には自分の役割を守りながら審査に臨む必要があります。

 

今回の審査では、そのリーダーの方針に従うことで、新しい体験と知見を得ることになりました。

 

 


美点発見トレーニングという方針

今回、リーダーから示された審査方針は
「組織の良いところをどんどん引き出そう」
というものでした。

 

ISO審査は適合性確認が基本です。
そのため、美点発見に重きを置く審査は、本来の確認がおろそかになるのではないかという懸念が頭をよぎりました。

理想としては理解できます。
 

しかし、実際にそれが現場で機能するのか。
適合レベルの確認はできても、「強み」と言えるレベルまで本当に引き出せるのか。

正直なところ、不安がありました。

 

ただし今回の審査はサーベイランスでした。
 

更新審査とは異なり、期中の進捗確認という位置づけです。
その意味では、ある程度のチャレンジが許される状況でもありました。

 

とはいえ、リーダー方針をどう具体的な審査行動に落とし込むか。
審査前日はそのことを考え続ける時間になりました。

 

 


短時間審査の難しさ

今回の審査計画は、多くの部署を短時間で回る構成でした。
特定部署に時間をかけて深掘りするスタイルではありません。

 

短時間で初対面の相手から「強み」を引き出す。
 

しかも本人が自覚していない可能性のある強みを浮かび上がらせる。

これは想像以上に難しいテーマです。

 

悩んだ末に私が出した結論は、
冒頭の問いかけで突破口を作ることでした。

 

 


「頑張っていることを教えてください」

審査開始の最初に、こう問いかけることにしました。

 

「頑張っていることを教えてください」

 

ISO認証企業の管理職であれば、必ず何かしら取り組んでいることがあります。
成果が出ているかどうかは関係ありません。

自分なりに力を入れていること、挑戦していること。
そこをまず語っていただくことにしました。

 

理想は、その中でも他部署に誇れるような取り組みを引き出すことです。

 

 


心の壁が崩れる瞬間

審査員と被審査者は、ほぼ例外なく初対面です。
そこには自然と緊張感が生まれます。

 

最初から「適合していますか」と確認されると、人は防御的になります。
 

しかし、「頑張っていることを教えてください」と言われるとどうでしょうか。

一気に和やかな雰囲気になるわけではありません。


それでも、確実に会話の空気は変わります。

 

さらに予想外の効果もありました。
頑張っている取り組みの話から、自然に目標管理や成果資料の話につながっていくのです。

 

結果として、その後の審査展開が非常にスムーズになりました。

 

 


検出事項という“お土産”

今回の審査はまだ一度の試行です。
この方法が常に有効だと断言することはできません。

 

しかし限られた時間の中で、十分な量の検出事項を残すことができました。

ここでいう検出事項とは、不適合指摘の数ではありません。
 

審査の目的は不適合を多く出すことではないからです。

 

むしろ、
組織が前向きな気持ちになれる示唆を残すこと
これが審査の価値の一つだと私は考えています。

 

 


 

「また来て欲しい」と言われる審査

最終会議後、後片付けをしていると、今回多くの場面に同席されていた工場長から声をかけられました。

 

「今回の審査は楽しかった。また来て欲しい」

 

とてもありがたい言葉でした。

 

 

現場の全員が同じ印象だったかは分かりません。
しかし少なくとも、管理する立場の方には審査の価値が伝わったのだと思います。

 

そのきっかけは、
リーダーの「良いところを探す審査をしよう」という方針でした。

 

この経験は、私にとって審査のあり方を考え直す大きな転機になりました。

 

 


🌱『今回のひとこと』

■「頑張っていることを教えてください」は最強のオープニング