す言うまでもなく髯ダンの出世作であるPretenderの歌詞、
「もっと違う設定でもっと違う関係で出会える世界線選べたらよかった」
というのは生きていれば必ず思うことだが、目下視聴中のマイディアミスターでもそのモチーフが大々的に扱われている。
主人公ドンフン(写真右)の兄と弟はいわゆる「負け組」であり、三兄弟はみんな難関大学を卒業したのに、長男(真ん中)は大企業を退職後事業に失敗して借金もちになり嫁に逃げられる…三男(左)は新進気鋭の映画監督だったのに初の長編が完成させられず泣かず飛ばすに…
唯一定職についている主人公ドンフンも部長とは言え、後から入社して社長となった後輩ジュニョンに左遷させられ、なおかつ自分の奥さんと浮気されてしまうというひどい目に会い、その奥さんから「毎日死んだような目をして会社に行く」と言われる始末。
なんでこんなふうになってしまったのか、という後悔と敗北感に満ちた生活を送っていた三兄弟が、これまた壮絶で取り返しのつかない過去を背負いながら懸命に生きているIU演じるジアンとの出会いを通じて新たな世界線を選んでいくさまがとんでもなくエモいのである。
そのドンフンの妻というのが憂いのあるなんとも色っぽい美人なのだが、
この美人妻を演じていたイ・ジアが昨年主演したドラマが「パンドラ」。
このドラマも、イ・ジア演じる主人公が15年前のある時間をきっかけに記憶喪失となっていたのがストーリー序盤で記憶がよみがえり、失われた時間と取り戻し新たな世界線を選び直す物語なんである。幼き頃から暗殺者として訓練された設定で戦闘力無限大の彼女のアクションシーンも見もの。
ここのところ話題にすることが多い無人島のディーバでもそのへんは出てくるわけで、
こちらも主人公ソ・モクハが15年前に遭難することで断ち切られた世界線を結び直す物語だった。
モクハを演じるパク・ウンビンが猛烈に歌がうまいのもびっくりしたが、少女時代のモクハを演じるイ・レ(上の動画で歌っている)の炸裂する青春オーラがあまりに印象的だったので、近作「こんにちは?私だよ!」を見てみたら、
このドラマでも主人公の少女時代を演じており、キラキラでブイブイ言わせていたその頃から20年経過して、なんともさえない人生を送っている主人公の前に突如少女の自分が現れるというぶっ飛んだ設定となっている。
面白いのは、「無人島のディーバ」でも「こんにちは?私だよ!」でも、少女時代において「未来の自分」に語りかけるシーンが出てくることで、前者では歌手として成功している未来の自分がうらやましいと語った直後に無人島に流されてしまい、後者では、未来の自分も今同様幸せになっていると想定したメッセージを送るのだが、現実は悪いこと続きという展開になるわけ。
とはいえ、どちらの話も過去にとらわれず新たな世界線を描くストーリーとなっている。
そして、若き日の自分と未来の自分の世界線をつなぐメッセージといえばこちら。
この流れで聴くとなんとも心に沁みる。
さらにハードに物理的に世界線を行き来するのがクリストファー・ノーランの「テネット」。
とにかく設定が複雑であたまが混乱するが時間というものの不可思議を体感できる作品であり、特に主人公の相手役のエリザベス・デビッキの美貌は特筆に値する。
まだまだいくらでもあげられるだろうが、これはもう人類にとって普遍のテーマなんだろうと思われる。