機械と人間のあいだ | typの推しつ推されつ

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現在上映中の「ザ・クリエイター」を見てきたのだが、


SFでは定番になっている感のある機械と人間の戦いの行く末を描いた話である。


「ロボット」という言葉を初めて使ったとされる古典SFのずばりその名も「ロボット」という小説でもテーマはロボットと人間と戦いだったりする。これはなんと1920年という100年前の作品である。

ターミネーターやマトリックス、そしてブレードランナーも人間とロボットの相剋が描かれているが、最近の作品ではクリストファーノーランの弟であるジョナサンノーラン入魂の「ウェストワールド」がど直球でそのテーマを扱っている。

なかなかにバイオレントで凄惨な演出を多用していてショッキングなのだが、ジョナサンの徹底的にディテールにこだわった超クールな映像美に圧倒され、錯綜する時系列や記憶の迷宮(ここらあたりはメメントを彷彿とさせる)に耽溺できる作品。アンソニーホプキンスの怪演ぶり、イヴァンレイチェルウッドのこの世のものとは思えない美しさなど見どころ満載。


ジョナサンノーランの作家としてテーマには機械との相剋を通じて人間性を浮き彫りにするというのがあると思しく、前作「パーソン・オブ・インタレスト」は犯罪予知AIと主人公たちがタグを組んで犯罪捜査を行うという設定だったが、ここでも機械のほうがむしろ人間らしいんではないか?という問いを突きつけられる。

この作品はウエストワールドに比べる軽妙でコミカルな演出も多用されていてエンタメ性が高いのだが、なにせ登場人物たちが超魅力的。初登場時ホームレスだった主人公ジョンは元国際スパイでとにかく強く男気満載。天才プログラマーフィンチのウルトラインテリぶり。女刑事カーターの正義感。元殺し屋ショーの身体能力とドSぶり。天才ハッカールートの頭脳。腐敗警官から変容していくさまが泣かせるファスコ…などなど。


最近アニメ化されて配信開始された「プルートー」もまた同じテーマ。


ロボットの人間味のほうが人間を超えるんでは?という問いかけは、だいぶ前の作品だが「絶対彼氏」にも提示されていた。未見だが韓国でもリメイクされている。



ロボットの「人間性」というと忘れられないのは、山本弘の「アイの物語」所収の「詩音のきた日」という短編小説で、介護施設に配備された詩音のという介護ロボットと住人が心を通わせる過程を描いた傑作である。


そして、もはやこれは人型ロボットでもないペットロボの話なんだが号泣必至な「ハッピー」。

 顔面の1行文だけでしかコミュニケーションがとれない犬型ロボットと主人公との情感あふれる交流には言葉と感情の奥深さを思い知らされる。


なんとなくだが海外の作品には人間とロボットが対立するものが多く、日本の作品にはドラえもんをはじめとしてロボットと共生する話が多いような気がするが、さて来たる世界ではどうなるのか。