
午前中はカンファレンス,回診と皆でしっかりと治療方針を検討,話し合いました.ところが初療はなんだか慌ただしい雰囲気です.最近ちょっと落ち着いてた岡本先生の「ヒキ」が復活?そう,今日の初療責任者は岡本先生です.日勤帯だけで10件以上の救急車を受け,その合間にWALK INの診察です.そんな中でもペースを崩さない姿はさすがです.
本日のドクターヘリ(小林,山邊先生,藤巻看護師)
1件目 下肢切断,心肺停止
早期医療介入を目的にドクターヘリ要請です.現場到着まで25分程度はかかるでしょうか.ドクターヘリが早いか,救急隊による病院搬送が早いか,その事案の状況で救急隊現着後に判断すれば良いことです.まずはドクターヘリを要請してから考えれば良いのです.まさに本事案はその考えに乗っ取った要請です.機内で準備をすすめます.離陸して10分後,運航管理室から「キャンセルです.」との連絡.患者さんにとって一番良い対応を救急隊が判断されました.またよろしくお願い申し上げます.
2件目 施設間搬送(くも膜下出血)
1件目の出動直後に施設間搬送の依頼がかかっていました.1件目がキャンセルになり,そのまま本事案に対応することにします.運航管理室が消防と連携し最適なランデブーポイントを選定します.くも膜下出血の患者さんです.ランデブーポイントで引き継ぎ,鎮静と降圧をはかりつつTECCMCへ搬送します.救急医監視下のドクターヘリ搬送は再破裂防止に有用です.脳外科チームにより無事手術終了です.
3件目 呼吸困難,意識障害
救急覚知同時要請です.いつものランデブーポイントへ着陸,そのまま支援車に乗り込み救急車と途中ドッキングします.とにかく1分1秒でも早い医療介入が予後改善,後遺症軽減につながるのです.消防の方々もしっかりと認識しておられます.救急車に乗り込み診療開始.と同時にランデブーポイントへ向け救急車を走らせます.診療は走りながらで十分.次は搬送時間の短縮です.低血糖なし,12誘導心電図問題なし,心エコー問題なし,でも冷汗あり!何かが起こっています.気道,呼吸,循環は安定,でも意識が今ひとつはっきりしません.ならばTECCMCで精査です.機内へ搬入し離陸.その数分後,「痙攣!レベル低下!!」速やかな対応しつつヘリポートに到着です.救急車搬送であれば搬送中に痙攣が起こっていたでしょう.適切なヘリ要請により患者さんに利益がもたらされました.
搬入後,MRIにて脳梗塞が判明しました.早期搬送が後遺症軽減につながった事案です.
4件目 軽トラックからの転落
要請終了時刻直前の要請です.同時要請.「年齢,性別,詳細不明.交通事故.」 傷病者数,状況はわかりませんが,医師2名,看護師1名いればほとんどの事案に対応可能です.取り敢えずの準備を藤巻看護師は手際よく行います.入ってくる情報によると,消防の管轄地域の境界での事故のようです.対応消防とランデブーポイントの支援消防がどうやら異なるようですが,この地域,そんなことは関係なく協力体制は出来ています.「傷病者1名.現在現場対応中.」この無線を聞きながらドクターヘリは現場直近のランデブーポイントへ着陸します(写真).「ヘルメット装着,資機材かついてダッシュするよ!」ヘリを降り,小生,山邊先生,藤巻看護師は交通規制された道路を走ります.すると向こうから患者さんを収容したばかりの救急車が走ってきます.路上で救急車に乗り込み外傷初期診療開始.救急車はランデブーポイントへ走り始めます.患者さんは・・・頻呼吸,橈骨動脈触知不可,冷汗著明!どうやら胸部外傷,開放骨盤骨折,下肢開放骨折による出血性ショック状態です.まだ意識あります.虚脱した血管ではありますが末梢ルート確保.急速輸液開始.診療を開始し7分で機内収容.輸液にて橈骨動脈触知可能となってきます.このままTECCMCへ搬送です.離陸し7分で初療へ.しかし,初療搬入直後にレベル低下,再びショックへ.気管挿管,骨髄輸液路確保,胸腔ドレナージ,IABO挿入,垂直剪断型の不安定骨盤骨折に対し創外固定,緊急輸血・・・予測生存率20%以下の厳しい症例でした.ドクターヘリだから受傷後20分で医療介入し現場での心停止を防ぐことが出来ました.陸送なら現場から30~40分かかっています.おそらく搬送中に心停止している症例です.今までであればあきらめていた患者さんも,一筋でも光が見えてくる可能性があります.
2消防本部,警察など多くの方々にご協力いただきました.ありがとうございました.
本日は午後から4件のフライトでした.日々寒くなり,日没も早くなっていきます.皆様,御自愛ください.