皆さんお久しぶりでございます。
あたしの名前は噺屋喜兵衛ともうします。あたしの出番はといいますと、年に一度、とある小さな劇場で夏に行われます納涼の出し物のつなぎなんです。
つなぎと言いましても作業服ではございません。ましてやワンピースなんてしゃれたものとは程遠い。今年も気張って待っておりましたが、あたしが漸く参上できたのは二日目でやんした。今回小屋主さんの粋な計らいで、二夜に渡ってお話をお届け出来るってぇ~時に、このトンチンカンの作者ってのかい?うつつヌかして客呼ぶのわすれちまったんでさぁ。二日めには多少すくないけれども、足を運んで下さるありがてぇ~客人が増え…あ…いや、初日のお客さんにも勿論感謝していますとも。
あたいら噺家ってのは好き勝手しゃべって、銭をいただくあこぎな商売でごぜぇやすが、聞き手がイねぇとただの一人事になっちまうんですわ。一人でも聞いてくれる人がいるってのは誠にありがたいってぇ~ことです。
さぁ、こんな真冬になんで納涼噺家のあっしがあらわれたかといいますと…まぁ~単純に夏に成仏できなかったって事でございまさぁ~。
夜もふけり、雨音も響くこんな夜でごぜぇます。ちょっくら噺相手になってもらぇやせんか。
な~に今回はお足は頂やせん。
雨の音が響き渡る夜もふけての牛の刻。独りの男が寝静まった街を歩いていた。するとポツリポツリとトタンの屋根を叩く雨音にまじって足音が聞こえる。
こんな夜中なのに珍しい事もあるもんだ。男はなんとはなしにふりむいてみる。そこにはシャッターを閉めた店々が並ぶばかり…おかしなこどもあるもんだとまた歩きだす男…………
おっといけねぇ、こんな時間になっちまった。冬ってのはなんでか調子が悪い。今日はこのへんで失礼させて貰うよ。
なに?続き?また雨がふったらおあいしましょう。