ジニョク Act.8
ヘインの顔に光がやわらかにあたって、きれいだった。やりとげた?って感じ? かっこいいよ。ぼくはきみに何をいうべきか…気づかなくてほんとごめん。でもいまもこうして君に励まされる。
「ヘイン」
「何よ」
言葉を探しながらぼくは名前を呼んだ。
「気持ちをありがとう」
「“気づかなくてごめん”よりマシね」
ヘインのことばに萎えた。それ思ってた。
「きまり悪くない」
「それもいおうとしてたとこ」
かっこ悪い。
「謝らないで」
ヘインはピシャっといった。
「こんな話をしたのは…代表と別れてほしくないからよ」
「別れないよ」
ぼくは諦めが悪い。というか無い。おまえがよく知ってるだろ。ぼくがそういうとヘインはコーヒーをひとくち飲んだ。ぼくも飲もうとすると軽かった。あれ。無意識に飲んでいた?
「冷めちゃった」
「告白なんかするから」
ぼくは平気なふりしていった。カフェオレのフタを開けて中身を確認した。
「告白じゃなくて自首よ」
「それじゃ犯罪みたいだ」
まだ少しあった。まるで愛の希望みたいに。
「じゃあ自白かな」
「同じことだろ」
ぼくはフタを閉めた。
「すっとしたわ」
彼女は笑った。こんなに近くにいたのに、わからなかった。気持ちってやっぱり見えにくい。ちゃんといわなきゃ伝わらないんだ。
「ヘインはずっとぼくのこと…心配してたよな」
「…代表とのこと? あたりまえよ。世界違うし、年上だし、わたしのほうが、若いしかわいいし」
「おい」
「でもジニョクが好きになった人だからって見てたら、あの人もすごい人だった。あなたのために彼女も勇気をもって行動してきた…」
ヘインがぼくをまた見た。ヘインぼくいま泣きそうだよ。そうなんだ。彼女はぼくのためにいつも行動してきた。
「あの人はきっと、あなたを幸せにするわ。本気だもの」
うん。でもぼくはそれ以上に彼女をしあわせにする。それがぼくらの愛なんだ。会いたいな、スヒョンさん。ぼくは希望のひとしづくを飲み干した。