スヒョン Act5

細い道を進んで、少し広くなった場所にとまった。ライトを消したら、街の明かりがまぶしく見えた。

「この明かりのなかの人たちが、みんなしあわせだといいですね」

真顔でいうんだ、この人は。あのなかにはマンションのなかのわたしもいるかもしれない。寂しかった夜も、こんな風にだれかが祈ってくれていたかもしれない。

「はい、まずはぼくたちがしあわせになりましょう」

とバーガーをわたされた。

「おなかぺこぺこだわ。はやくするめちょうだい」

とわたしはふざけた。ジニョクさんは、なにかいいたそうにわたしをじっと見た。

「じゃあ口あけて」

「えっ」

「あーん」

いっしょに口を空けたら、するめが入ってきた。ううん。これ…ポテト…

「おいしい」

「でしょー。あげたてのスルメは最高ですよね」

えー。イギリスで食べたフィッシュアンドチップスよりおいしい。

「あげるのが、ぼくだからおいしいのでは」

へんな自慢にわたしはジニョクさんの手元のポテトを彼の口にもつっこんだ。

「わたしがあげるポテてもおいしいと思うわ」

彼がわらった。

「ほんとだ。スヒョンがくれると、おいしい」

「あたりまえでしょう。同じポテトだもの」

話ながら、なにかがひっかかっていた。

「は、どうぞ、代表」

初めてのバーガー。どきどきね。でも、ねえ、さっきわたしの名前をよばなかった❓ 聞き違えたかしら。

「ねえ、さっき」

「代表、むきかたわかりますか」

「むきかた?」

「これへまするとこぼしちゃいます」

手にもっているわたしのバーガーをむいてくれた。

「はい、あ、じゃあ、コーヒーもってください」

ん?なんかごまかしされる気がするけど

「じゃあ、ぼくたちの未来に、乾杯」

ホットコーヒーで乾杯した。ん、まあ、いける。それからバーガーにぱくついた。おいしい。