ばか男ジョンファン 2

 

「だって「コンサートだって、ドクソンが誘ったのおまえだけじゃん。だからおまえだって、いまだイ・ムンセ好きなんじゃねえの?」

ジョンファンはだまってる。

「誕生日プレゼントだってもらったんだろ? おれたちはなかったぞ。ドクソンだけ、からなんて」

ジョンファンはだまってる。ほんとばか男め。

「テクに気ぃつかったのか」

「…違う。」

「テクだから負けると思ったのか」

「違うよ。ばか。…いや、そうかもな」

おまえほんと、そんなんであいつあきらめたの?

「ばか野郎」

おれは鼻をかんだ。思いっきり。

「おい…ドンリョン」

「あー、もう。」

おれは鼻をかんだ。とまらねえ。顔中水びたし。酔ってるんだなおれ。

「おい、…なあ、おまえ。…おまえ…、ドクソン、好きだったのか」

オレは黙ってる。いまごろ気づくな、ばかめ。そうだ。オレはドクソンが好きだった。大好きだった。ずっとばか友だちだったのに、高2のころからあいつ、色気づきやがって、ソヌかと思えば、ジョンファンで、それからテクで。とーちゃんはこえーし、かーちゃんはオレより仕事だし、とにかくオレはなにやってもおもしろくなくて、マイケルに乗せてもらうバイクが一番気分よかった。おれ死んだってだれも悲しまないし、でもノーヘルで事故ったときは、やっぱり生きたいって思った。飛んだ瞬間、かーちゃんやとーちゃんの顔といっしょに、ドクソンも浮かんだ。

でも、ドクソンにとってオレはともだちでしかなかった。それだけはわかってる。人魚姫といっしょでオレは沈黙の代わりにダンスを選んだ。二人でばかな踊りするのが楽しかった。踊るのはオレとドクソンだけの世界だったからな。おまえらみたいに気持ち伝えなくたって、平気だった。サンショウウオにはもとからささやく言葉はなかったからな。いつもいっしょに騒いでいられれば、それでよかった。

おれには可能性がなかった。完全に。だからよけいにこいつに腹が立つんだ。行けたのに行かない男に。ほんとばーか、ばーか、ばーーーか。ああ、ほんともう、ジョンファンのバカ。