10月16日日曜日、コンサートの夜4
会場の前にドクソンがいた。昼のあのかっこのままだ。寒そう。でも、間に合った。
「どうしたの。」
息がきれてなんにもいえない。
「なんで、ここにいるのよ」
ドクソンは聞いてくる。息を整えながら、ぼくは答えを考える。どうしてだろう。対局、さぼるなんて、ほんとどうかしてるさ。からだもつらい、でも、気持ちがいい。
「イ・スンファン、やっぱり聴きたくなって。チケット…、もうないかな…」
ドクソンは、怪訝そうにぼくを見る。
「…チケット…あるわよ…」
ドクソンはそういうとだまる。
「ぼくに売ってくれる?」
「…先輩に、聴いてきたの?」
「先輩ってドクソンの?なんで?」
「ううん、別に。…一枚ちょうど、あまってたから。いいわよ、あげる。」
「買うよ」
「いいよ…彼氏こられなくなったから、あまってたの。…ふられたわけじゃないからね」
「うん。わかった。入ろう」
ドクソンと中に入る。会場は2階だ。階段を上りながらドクソンは振り返る。
「ほんとに、ふられたわけじゃ、ないからね」
まだいってる。こういう、子供じみたところが…かわいい。かわらない、君は。…大好きだ。今度、ジョンファンに話そう。逃げないで。二人で対決だ。あらためて、ぼくがドクソンを好きなこと。君の気持ちも知ってること。財布の中身見たこと。うそついたこと謝って、…謝って、ぼくはドクソンに好きだと言おう。
「途中でね、事故にあったんだって…」
階段を登りきってもまだ、つまらないいいわけを続ける。
(もうだまって、ドクソン。)
君をふるばかな男の話なんてもういいから。ぼくはジャケットをドクソンにかけた。
「寒くないわよ」
強がりばっかり君はいう。
「ぼくが暑いから、着ててくれ」
ぼくたちは会場に入った。もう曲が始まっていた。あ、運命の曲だ。誕生日の夜、みんなでこの歌を聴いた。消えたのではなくて、ただ心の奥底に沈殿していた気持ちがかき回されたあの曲。ステージの光で、ドクソンのシルエットが浮かび上がる。「おお~」とドクソンがつぶやいて振り向いた。ニコニコしたドクソンの顔が近づいて、ぼくの耳元でささやいた。
「テクの誕生日に、テクの部屋で聴いたね」
なんだか嬉しくて、心臓が壊れそうだよ。