双門洞の仲間たち 1

 

小学校に入る前に、ぼくは父と二人で慶尚道の金海市から引っ越してきた。ソウル特別市道峰(トボン)区双門洞(サンムンドン)ポンファン堂の横町。車も1台しか入れない狭い通りだ。いまの母さんは、父さんと同郷で、そのころ結婚してふるさとを離れてこの町で暮らしていた。妻を亡くして傷心して引きこもっていた父を心配して、ここへ来ることを提案してくれた。いま思えば、それも小さな縁だったんだろう。おばさんは、10年後に同じようにだんなさんを亡くして未亡人になった。それがいまはぼくの母でもあるのだから、人生は不思議なものだ。遊び友だちのソヌは兄弟になったわけだし。誕生日の都合で、ソヌが兄貴なのは釈然としないけど。

ぼくはチェ・テク。囲碁棋士。ちまたでは「天才」をつけてくれるが、好きなことをただやってきただけだ。大人を負かすと気持ちよかった。負けるのは嫌い。世界一って気分いい。中学を卒業して、プロになったから、高校は行かなかった。だから4人の幼なじみだけが、ぼくの高校生活だった。

みんな、ぼくの部屋に入り浸って、よく遊んだ。いないときでも、勝手に部屋に入って遊んでた。それがあたりまえだった。テレビ見て、音楽聞いて踊って、ラーメン食べた。対局がない日は、朝、牛乳を飲みながら、バス停に向かう彼らをよく見送った。