可愛い3匹の子猫達 | ひびきの異常な日常

ひびきの異常な日常

放浪旅が好き。
女も好き。
でも女性不信…
本当の愛ってなんだろう…
顔とセックスだけは自信がある浮気ばかりのクズ男。
セックス依存症なのかもしれない。

常に満たされない気持ちと劣等感。
現実でポジティブを演じる自分はここには居ない。

僕は結婚式に呼ばれていた。
仕事の先輩の結婚式だった。
そんな仲良く遊んだ記憶は無いが、何故か呼ばれた。
建前だろうか?
それともご祝儀が欲しいからだろうか?
しかし、呼ばれた僕は嬉しかった。
何故なら皆んな呼ばれているし、これで自分だけ呼ばれなかったら仲間外れだ!

結婚式の前に食事会があった。
たくさんの料理が出て、これを全部食べた後に披露宴の食事は食べれるのだろうか?と考えた。
食事会は友人先輩、全員参加していた。
結婚する先輩も参加している。

ふと披露宴は何時に何処でやるのか気になった。
しかし、案内状が見当たらない。
というか、僕は案内状を貰って居なかった。
本当に僕は結婚式に案内されたのだろうか?
案内されていないのに、この食事会に来るなんて恥ずかしい限りだ。
隣に居た人の案内状を盗み見ようとするが、良く見えない。
すると先輩が近寄ってきた。
『楽しんでる?この後みんなでバス乗って披露宴会場まで行くから。』
その言葉に僕はホッとした。
先輩は次いでや建前ではなく、僕を一人の人として披露宴に呼んでくれていたのだ。
僕は嬉しく、やっと本当に皆んなの輪に入れたのだと思った。

結婚式会場はホテルだった。
既にホテルにはチェックイン済みだった。
部屋には友人と自分の飼っている猫が3匹居た。
結婚式の先輩がいつの間にか、中学の同級生になっていた。
同級生は部活の部長をしており、良く僕を虐めていた。
部長は白のタキシードで部屋に入ってきた。
『このお土産が美味しいよ』
そういうとお好み焼き煎餅のような物を見せてきた。
一口食べると美味しかった。
職場のお土産はこれにしようと思った。
そして年月は人を変え、人を丸くするのだなと思った。

ふと見ると猫達が居なくなっていた。
僕は先ほど猫達を見かけたホテルのフロアーへと降り、猫を探した。
直ぐにチェリーが見つかった。
チェリーはホテルの廊下で餌を食べていた。
『チェリー!』
僕は名前を呼んで、チェリーを抱き上げた。
いつも抱くと暴れるチェリーだが、この時は静かに抱かれていた。
チェリーの体の温もりが暖かかった。

チェリーと餌の容器を手に持ちエレベーターへと乗り、自分の部屋へと戻った。
餌の容器が手から落ちそうだっので、ホテルロビーにあった机を結婚式参列者の男がエレベーターに乗せてくれた。
助かるのだが、後で戻さなければならない。
ここまでしなくても、と思った。

部屋へチェリーを連れ腕から降ろすと、チェリーは静かに歩き出した。
部屋の中の襖を開けると、襖の中でミルクが丸くなって寝ていた。
相変わらずマイペースなミルクだった。
ミルクと呼ぶと、ミルクは低い声でニャーとだけ鳴いた。
レモンは?
僕はレモンの名前を呼んだ。
レモンはベットの中に居た。
レモンが行方不明だと思っていたので、僕はホッとした。
名前を呼ぶとレモンも低い声でニャーと鳴きながら僕の元へと寄ってきた。
レモン…。
僕はレモンを抱き上げた。
レモンは相変わらず甘えん坊だった。
僕は3匹の為に水を置かねばと思った。
同部屋の友人がドアを開けっ放しにしていたので、3匹が外へ出ないように扉を閉めた。
3匹とも元気だった。

3匹が死んで何年経つだろう。
変わらない容姿と雰囲気が、僕の心を締め付けた。
3匹は僕のせいで死んでしまった。
あれから僕は猫を飼うことは出来なくなった。
もし猫を飼いその猫を幸せにしたら、3匹は僕を許さないだろうと思う。
『グーグーだって猫である』の映画の冒頭と同じセリフだ。
しかし、僕は映画のように新しい猫は飼えない。
久しぶりに3匹に会えて嬉しかった。
彼らは今でも僕を怨んでいるだろうか。
実家に3匹を置いて行く時、車に乗り走り出す時、3匹が車に向かって鳴いている姿が今でも忘れられない。
初めての外で、3匹震えながら隠れていた姿を忘れられない。
僕の部屋で、いつも一緒に寝ていた3匹を忘れられない。
ミルクは左脇に、レモンは胸の上に、チェリーは股の間に横になっていつも寝ていた。
レモンは重かった。
特に体が一番大きいので日に日に重く感じたが、苦ではなかった。
いつも素っ気ないミルクは、僕の左脇に彼女のように腕枕で寝る奴だった。
チェリーは人見知りだが、僕の股の間で足に頭を乗せて寝るのがお気に入りらしかった。
3匹の寝顔はいつも天使だった。
 
また夢でも良いから3匹に会いたい。
もっともっと、幸せに出来たろうに…。

そしてやはり僕は、新しい猫は飼えないだろう。