「着物をめぐる物語」湿度高め | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

着物をめぐる物語 (新潮文庫)/新潮社

一気読み:171717 /5
興味深い:食食食食 /5


林真理子さんの
「着物をめぐる物語」を読みました。


『松の緑』
 加賀友禅職人の父は職人気質の人だった。その父が
 亡くなったあと、私は父が染めたという金沢の芸者
 美津子さんの出の衣装が見てみたくなった。

『形見』
 銀座のママである”私”はるり子のことを思い出すとつらくなる。
 いい旦那がついていたるり子は着物をたくさんもっていた。
 冗談で死んだら形見として頂戴とねだった大島もその一枚だった。

『唐子』
 男爵家のお嬢様であった”私”は「婦人公論」にお淑やかな
 女性として大振袖でグラビアに掲載されたが、実際は大柄で
 運動が大好きな娘だった。

『お夏』
 のびのびとしたお嬢さんらしさを売りとする女優の由美子は
 西鶴の但馬屋お夏を演じることになった。甲斐庄という老人は
 衣裳の考証で権力のある男だが、由美子は苦手だった。

『歌舞伎座の幽霊』
 歌舞伎座の衣裳部屋で働いていた”私”は、ある夜、
 誰もいないはずの場所で藤娘の衣裳を着けた男を
 見てしまった。おそらく幽霊だったのだと思う。

『姉妹』
 健在であれば70を過ぎていると思うが、”私”の姉は
 縹緻よしだったが、女学校の受験にも失敗して嫁入りには
 何も入らないからと毎月着物を注文するようになった。

『織り姫さま』
 姑の秀は越後上布の有名な織手であった。子供もなく
 夫も失った佐和子はその姑と二人で暮らすことになる。機織りを
 習うことはしないが、佐和子は姑が機を織るのをじっと見ていた。

『箱屋』
 めっきり少なくなった花柳界の箱屋は女たちの着付けを
 するのが仕事だった。重たい衣裳を着付けるためそれは
 男の職業だったが、今では正月くらいしか出番がない。

『美装室』
 美枝子の「飯田美容室」は古いホテルにあり、
 結婚式の着付けを行っていた。長くやっていると花婿に
 逃げられた花嫁というのを見ることがある。

『着物熱』
 呉服屋「加々美屋」にお得意さんである田崎さんの娘と
 名乗る女性が訪れた。田崎さんは1ヶ月も前に亡くなっており
 遺された大量の着物を前に途方に暮れていたようだ。

『路地』
 花街だった深川はいまは猫とばあさんばかりが目立つ。
 かつて辰巳芸者だった女たちは身を寄せ合って暮らして
 いたが、さいきんせい子姐さんの様子がおかしいようだ。

 

着物が好きなので
読んでみました。

着物作りの職人や
売る人、着る人
様々な物語があり興味深かったです。

やはりじめついたお話が
多かったですね。
怪談とは違いますが
雰囲気が似てます。

何となく
「嫌なこと」「怖いこと」が
起こりそう……。

個人的には『形見』と
『姉妹』が好きでした。

『形見』は雰囲気がほんとに怪談っぽい
感じでした。
別に幽霊が出てくるわけじゃないですし
怖さもないんですけど
湿度が高めです。

冗談で友人に着物を「形見に欲しい」と言った後
しばらくして、本当にその友人が死んでしまうんです。
この短編ではその友人の死までのエピソードを
語っているだけなのですが
何だかドキドキしてしまいました。

『姉妹』は主人公の姉のダメっぷりが
つらつら書いているお話なのですが
主人公のお姉さんというのが
本当に自己中心的な人物で
読んでいると
主人公に感情移入して
姉を呪ってしまっています。

これはちょっと怖い短編です。
主人公は老女となり、回想する形で
若い頃の姉の振る舞いを
克明に思い出して恨みがましく語ってるんですよ。
ぞっとしますよね……。


その他のお話も面白かったです。
着物を主題にすると
なんだか怖い雰囲気のお話に
なるんでしょうかね。