「苦役列車」臭い立つような | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

苦役列車 (新潮文庫)/新潮社

苦しい:46464646 /5
気になる:GOODGOODGOOD /5


西村賢太さんの
「苦役列車」を読みました。



『苦役列車』
 北町貫多は中学卒業後、日当の仕事をしながら
 どうにか暮らしていた。友人が全くいない貫多だったが
 ある日、バスで同い年の日下部に話しかけられ親しくする。

『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』
 40歳となった北町貫多は小説を書いて暮らしていたが、
 ひどい腰痛にかかり動けなくなる。川端賞の最終候補に
 自作が残り、どうにかして賞が欲しいと願うが。



144回、芥川賞受賞作品とのことです。

中学を卒業して
家を飛び出した主人公が
コンプレックスを感じながら
日雇いの仕事に汗を流すという表題作と、
作家となったその後の主人公の

『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』の
2編が収録されています。

なんとも生々しい
男性の生活描写が
すごいですね……。

何というか、まぁ、わりと
――汚い。
まるでそこにいて
においがしてきそうなほどの
現実感です。

しかしそれゆえに主人公の
心理描写もひしひしと
伝わってくるような気もいたします。

中卒であるがゆえ
親友だと思っていた専門学校生と
劣等感を感じながらも付き合っていくのですが、
常に「こいつは自分をバカにしてるんじゃ?」って
思いが行ったり来たり……。

何という事件も起こらないのに
続きが気になってくるんですよね。


芥川賞ということで
芸術的な難しい作品かと
思ってたんですが
どんどん読めちゃうタイプの作品でした。
おもしろかったです。

去年でしたか、
映画化もしたようなので
見てみたくなりました。