「月の輪草紙」しっとりと漂う思い出話がステキ | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

月の輪草子 (特別書き下ろし)/講談社

しっとり美しい:☆☆☆ /5
切ない:000000000 /5


瀬戸内寂聴さんの
「月の輪草紙」を読みました。


90歳になった清少納言は
「月の輪の庵」で
自身の人生をゆるゆると振り返る。

死んだ母、父との対話、
最初の夫の則光、
宮廷での生活……
そして25歳の若さでこの世を去った
もっとも美しい女性、中宮定子。



90歳になった清少納言が
ひたすらぼんやーりと
昔語りをする小説です。

思い出した順番かのように
無造作にあらわれるエピソードは
どこかで聞いたことのあるお話が
多いです。

枕草子がベースに
なっているんでしょうね。

しかし、言葉のやさしさ、
身近さが格段に違います。

枕草子は大好きなんですが、
清少納言の「私って特別なのよ」という
自慢げな裏の声が
若干鼻についたりもしたりするんですよね。

その点がこの瀬戸内寂聴さんの
作品ではかなりお上品になっているように
感じられます。

若くて生意気だったかもしれない自分を認めつつ、
あれは本当にきれいだった、
ステキだった、大変だった
と、過去を振り返る清少納言。
とても身近な人物に感じられます。

90歳という高齢からか
時間関係も事実関係もふわふわと
漂うような感覚は
何だか心地よいですね。

とても気に入った作品です。
また源氏物語の訳も読みたくなりました。