- 気分上々/角川書店(角川グループパブリッシング)
前向き: /5
読みやすい: /5
森絵都さんの「気分上々」を
読みました。
『ウエルカムの小部屋』
有名大学出の一流企業勤務、知性、容姿と理想的な恋人と
別れて、自称発明家の男と結婚してしまった私。しかしアイディアが
出てても、そこから一歩踏み出せない夫とすれ違いが生じ始める。
『彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日』
元彼の結婚式の帰りに、初めて一人でバーに立ち寄った。
放っておいて欲しいのに、隣の席の男性にあれこれと話しかけられて、
つい、元彼の結婚のことまで話してしまう。
『17レボリューション』
千春は親友のイヅモと1年間絶交することに決めた。イヅモのことは大好き
だけれど、自分革命をする必要があったのだ。千春は付き合う人間を
「何か好き」という視点以外で選びたかった。
『本物の恋』
八年前、たった一日奇妙なときをともに過ごした男をカフェで見つけて
しまった。声をかけてみると、男も自分のことをおぼえているようだ。
17歳だった自分の特別な夜のことが思い出されてくる。
『東の果つるところ』
母子ともに生きながらえる確率は3パーセント。肥大化した病巣を抱えた
母は子に最後かもしれないメッセージを記す。父親であるかもしれない
人々のこと、これから子に降りかかるであろう困難のこと……。
『本が失われた日、の翌日』
バッグへ忍ばせておいた本が消えていた。新たな一冊を求めて書店を
訪れると、そこにも本は一冊もない。昨日付けで本はこの世界から
姿を消していたのだ。
『プレノワール』
母の危篤の知らせを聞いて、6年ぶりに故郷ブルターニュへ戻った
ジャンは相変わらず古い考えに縛られている母や親戚のバロウ一家に
うんざりした。
『ヨハネスブルグのマフィア』
黄熱病予防のワクチンを打ちに行ったとき、待合室である男性と目が
合った。そこで獣のような笑みを浮かべた男は、看護師にしつこく飲酒を
禁じられていながら、ビールを飲んでいかないかと誘ってきた。
『気分上々』
死んだ父親は柊也に「男は黙って我慢だ」と時代錯誤な遺言を
遺していた。柊也は遺言に縛られ、気になっていた女の子
依林(イーリン)とも気まずくなるし、友達付き合いもイマイチだった。
森絵都さんは
お久し振りかも、です。
児童書系のイメージが
あったのですが、
今回収録されていた「プレノワール」- 「ヨハネスブルグのマフィア」などの
大人なお話も面白かったです。
そしてちょっとブラックな気配を漂わせる
「東の果つるところ」は
なかなかの迫力でした。
しかし、やっぱりお気に入りは
表題作の「気分上々」でしょうか。
児童書風味のお話です。
お父さんの遺言を何となく守ってしまって、
本来の「お調子者」な振る舞いが
できない柊也の苦悩が
面白おかしく、そしてちょっぴり苦く
描かれていました。
ラストは前向き全開で
とても好みの短編でしたよ。
やはり森絵都さん、
好きです。