「おとぎのかけら」童話モチーフの短編集 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

おとぎのかけら 新釈西洋童話集/千早 茜

うっすら怖い:02020202 /5
童話モチーフがおもしろい:151515 /5


千早茜さんの
「おとぎのかけら」を読みました。


『迷子のきまり』(ヘンゼルとグレーテル)
 母親は優香とお兄ちゃんを何度も叩く。花火が見たかった二人はデパートで
 夜まで行方をくらますことにした。どうせ母親は放送で呼び出されない限り
 二人を置いて帰り、お酒を飲んで寝てしまうはずだ。

『鵺の森』(みにくいアヒルの子)
 通勤中に気分が悪くなり、休むことにする。そして偶然、小学生の頃の
 クラスメイト・翔也に声を掛けられ、彼の事務所へ行くことになった。
 彼は小学校の頃、クラスで浮いていて、あまりいい思い出ではなかった。

『カドムウム・レッド』(白雪姫)
 わたしは美大で事務や先生の助手として働いていた。叔父は画家で
 美智子先生はその奥様だった。彼女はすまし顔の自画像ばかり描いていて
 わたしのことをあまり快く思っていないようだった。 

『金の指輪』(シンデレラ)
 僕は25歳にして資産家だった。父親は大財閥の長男で母親は
 その愛人だったからだ。幼い頃にピアノを習いに行っていた家の娘のことが
 忘れられず、未だに探している。彼女は小さな金の指輪を落としていったのだ。

『凍りついた眼』(マッチ売りの少女)
 会社の接待を抜け出して歩いていたら、裏路地に引っ張り込まれ、
 幼い少女が体を売っている店に連れ込まれてしまった。少女がマッチを擦り、
 線香に火をつける。マッチ箱を使い切ったら自由になれると彼女は言った。
 
『白梅虫』(ハーメルンの笛吹き男)
 妻の美樹が年末に死んだじいさんの形見分けで盆栽をもらってきた。
 しばらくすると梅の花が咲いた。ところが、ある日気持ちの悪い虫がびっしりと
 付いていたのだ。気になっていたカフェの女性店員に相談すると……。

『アマリリス』(いばら姫)
 祖母は認知症の症状が出ているようで、起きている間は少女に戻っていた。
 それ以外は20時間以上眠っている。不倫が遠因で仕事を辞め、実家に
 戻っていた私は、自分が彼とどうしたいのかわからない。



泉鏡花文学賞受賞の「魚神」を
読んで、気に入った作家さんです。

今回2冊目です。
やはり雰囲気が好きかも、です。

よく知られている童話を
現代版に書き換えた感じの
短編集のようですね。

外国の昔話だと
遠くに見ることができる童話と違って
すぐ近くに感じるストーリーが
ちょっと怖いです。

モチーフの童話の使い方も
短編によって違っていて、
そこもおもしろかったですね。

原作のイメージの思い込みまで
計算されているような……。
「そうきたか!」って、驚きもチラホラ。

後味の悪い薄ら怖い短編が
どれもいい味を出しているのですが、
その中でも数少ない
ハッピーエンドが特に輝いて見えます。

白雪姫とシンデレラの
アレンジの仕方が好きでした。

でもマッチ売りの少女は
ちょっと怖すぎました……。

私、血が出るものは
ちょっと苦手なのですよ。

読みやすくてわりとオススメな短編集ですが、
血が出るの嫌いな人は
気をつけてください。