「からまる」優しい雰囲気とリンクが面白い。 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

からまる/千早 茜


リンクが楽しい:あったか気分あったか気分あったか気分あったか気分 /5
じんわりしっとり:☆☆☆ /5


千早茜さんの
「からまる」を読みました。


『まいまい』
 ベッドに転がっていると野良猫みたいな女が時折するりと
 入ってくる。女は武生の苦手な蝸牛を飼っているらしい。
 武生は境目がなくなってしまいそうな蝸牛の感じがいやだった。

『ゆらゆらと』
 「クラゲの血って何色なんだろう?」と携帯電話に打ち込んで
 送る相手がいないことに気が付く。田村はいつも男の人に軽く
 扱われることをむなしく感じていた。友人の華奈子のようになりたいと思う。

『からまる』
 不快なことが起きてもそれを外へ吐き出すことができない。そうやって
 清潔感のある公務員を40年以上やってきた。妻が浮気をしていたという
 事実を知っても、特に何も言わなかった。

『あししげく』
 息子が帰ってきたら甘いにおいがする、という状況を作りたくてお菓子を
 作っていた。しかしうまくいかず、息子を妊娠したときのことをぼんやりと
 思い出す。夫は初めはとても嫌いな男でスナックの客だった。

『ほしつぶ』
 二学期のはじめ、失敗をして金魚を殺してしまった。先生や両親は
 やがて事件を起すような人間になるのではないかと大袈裟に
 騒いでいる。叔父の武生さんだけがわかってくれていた。

『うみのはな』
 華奈子はまわりには「女の子が好きだ」と言っていたが、厳密には
 少し違っていた。実家に帰るときはあの男がいるかもしれないと、
 いつも爪を赤く塗っている。

『ひかりを』
 酸素ボンベを持ち歩いている大原さんと会ったのは、診察室だった。
 キリンレモンが大好きで、病状が悪化しても、何度も持ち直して
 会いに来てくれた。


千早茜さんの作品、
これで読みきってしまったかも、です。

しかしこの作品よかったです。

今まで読んだ作品は
ちょっとホラーなテイストを
感じていたのですが、
こちらはしっとりと優しい印象の作品です。

登場人物たちがリンクしていて、
各短編で視点が入れ替わります。

同じ出来事を違う視点で見た描写や
他の短編の後日談などが
盛り込まれているのも
この形態の短編の好きなところです。

強烈なインパクトはないですが、
優しい気持ちになれる一冊でした。

新作、まだ出ないんですかね。
楽しみです。