「死ねばいいのに」愚痴てんこ盛り | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

死ねばいいのに/京極 夏彦

湿度:…………………… /5

グチグチ:うーんうーんうーんうーん /5



京極夏彦さんの「死ねばいいのに」を

読みました。



マンションの一室で

殺害された鹿島亜佐美のことを

謎の青年ケンヤが関係者に聞きまわる。


4日しか会ったことはなく、

アサミとはただの知り合いだという

ケンヤは不倫相手、隣人、恋人、母親と

訪ね、生前のアサミのことを知ろうとするが、

誰もが自分のことばかり語り

日常生活の不満を漏らす。


「ならさ、――死ねばいいのに」



相変わらずの湿度を保っている

京極作品を読みました。


ジメジメ、グダグダ――、いやな感じです。

でも何故か読み続けてしまうのです。


今回の作品、実に半分以上が

人様の愚痴でした。

連作短編のような仕様になっていて

計6名様の愚痴がてんこ盛りです。


やれ、人が認めてくれない、

彼氏をとられた、

出世できない、

いい暮らしができない、

男運が悪い……。


そこで主役のケンヤくんが一言

「ならさ、――死ねばいいのに」、と。


その一言で愚痴だらけの日常から

憑き物がポロリと落ちるような。


妙に腑に落ちてしまう。

そんなに毎日が不満なら

もう死ぬしかないなぁ、と

思えてしまうのは危ない発想かしら。



勝手な解釈ですが、

京極堂シリーズの

「憑き物落し」にも近いような……。


あのシリーズも主役の古本屋が

思いつめている人物等を相手に言葉巧みに

「思い込み」を取り除いたりしちゃうのです。


そしてそれが事件のキーマン(犯人とか)だったりして、

そこから「事件解決!」というジメジメながらも

爽快なシリーズです。


本作品はそれとはまた違っていますが、

「俺、礼儀とか判んねーし、態度わりーし、馬鹿だし――」とか

言ってる今時の若者ケンヤくんが

愚痴ばかりのアサミの関係者を言い負かすのが

こっそりと快感です。


しかしこれはまぁ、

物語の本筋ではないのかもしれません。


本筋は、たぶん、

アサミを殺したのは誰でどうしてなのか、

というミステリっぽい部分ですかね。


最後はちょっとよくわからなかったのですが、

総合的にみて面白かったです。