「日本以外全部沈没」ほどよい(?)毒がおもしろい | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)/筒井 康隆

毒:毒毒毒毒 /5

笑:☆☆☆☆ /5



筒井康孝さんの「日本以外全部沈没」を

読みました。



『日本以外全部沈没』

 日本以外の国が全部沈没してしまった世界。各国の有名人たちが

 日本に集まってきて、競うように日本人のご機嫌取りをする。


『あるいは酒でいっぱいの海』

 おれが化学実験室で作りあげたのはヘリウムをつくる薬である。

 うっかりそれを水に落とすと……。


『ヒノマル酒場』

 宇宙人がやってきた、とテレビでは大騒ぎをしている。それをドラマだと

 思い込んでバカにするヒノマル酒場の客たちのもとへ宇宙人がやってくる。


『パチンコ必勝原理』

 パチンコ店へ品のいい紳士がやってきた。彼は有名な理学博士だ。

 店員が見守る中、パチンコ台を様々な角度から計測しだす。

 

『日本列島七曲り』

 赤軍派の学生たちに飛行機が乗っ取られた。だが乗客たちは

 嬉々として彼らに従い、乗っ取られた飛行機でどんちゃん騒ぎをはじめる。


『新宿祭』

 あらゆる反体制的な平和運動を是認する世の中。ゲバルトに使う

 人材の派遣を仕事とするおれは「新宿祭」を目前に大忙しだった。


『農協月へ行く』

 大金を持っている農協の面々が月面旅行へ出掛かることになった。

 心労をかかえたパイロットは農協の相手にすっかり参ってしまう。


『人類の大不調和』

 早朝、万国博に突如として現れる「ソンミ村館」では毎日虐殺が

 行われ、間違って入ってしまった一般客も次々に殺されていく。

 

『アフリカの爆弾』

 中の悪い隣の国が核弾頭ミサイルを買ったと知った酋長は

 国連から5ギガトンのミサイルの購入を決めた。


『黄金の家』

 近所のペンキ屋がいきなりやってきて、壁を金色に塗りはじめた。

 慌てて止めたが、金になった壁を目印に未来から人がやってきて……。


『ワイド仇討ち』

 父親を斬り殺された高瀬典輔は共を連れてあまり気乗りがしない敵討ちの

 旅をしていた。事情を知った同じく敵討ちを目的とした仲間がどんどん増えていく。



これはすごくおもしろかったです。


筒井さんの「毒」、いいですね。

大好きです。


皮肉たっぷりで、笑いたっぷり。

ツボにはまりました。

どの短編も選べないほどのお気に入りかも。


ショートショートサイズの

短編もいくつか挟まれているのですが、

短いのに必ずピリッと

スパイスが効いています。


特に『ヒノマル酒場』で酔客が宇宙人と

出会って「えんやとっと、えんやとっと」と

みんなで押しつぶして殺してしまう、なんて展開。

あらま、殺しちゃったよ。


誰が想像できますかね。


そして『アフリカの爆弾』では

アフリカの国(というかほぼ村のような雰囲気)の

男たちがネジがバカになっていつ爆発するか

分からない核弾頭ミサイル担いで歩き続ける。


何も知らない観光客が核弾頭ミサイルを

ベタベタ触って大賑わい。


この毒のおもしろさは

説明しがたいのですが、

とにかく面白かったです。


えんやとっと、えんやとっと……。